The Body16As time goes by……(02)
The Body16As time goes by……(02)
舞との勉強も進んで行った。舞の家で勉強していた時、舞ママが尋ねてきた。
「愛ちゃんは、進路は決まったの?舞ははっきりしてないのよねぇ」
「色々と悩んだんですけど、あたしはデザインをやってみようと思ってるんです。だから専門に進むつもりでいます。一度伺った事のある吉見さんの事務所って凄く雰囲気が良くて働き易そうだし、こちらのお宅もイイなぁっていつも思ってるんです。だから内装をやってみようと思います」
「へェ、舞と違ってしっかりしてるわね。舞も見習いなさい!」
「ハイハイ!」
でもあたしは知ってた。舞は好きな男子が居て、その彼と一緒の大学を受けるつもりだった。舞の学力も、その志望校に十分届く筈だということも。男の子向けのバースデープレゼントの相談を受けた貴方も勿論知ってる。
「そういえばもうすぐクリスマスよね。愛ちゃんは、予定とかはあるの?」
「イイエ。全く無いんです」
「アラアラ、若い女の子がそれじゃぁあんまりね、ね、ウチでパーティしない?!舞はイブに彼氏とデートのようだけど、25日は別に良いんでしょ?吉見さんもご一緒に如何?それともどなたかとお約束があるのかしら?」
舞ママ、ナイス!
「イエイエ、そんなものはありませんよ。そうですね、それではお言葉に甘えさせて頂きましょうか」
ヤッタァ!!
専門学校に進路を決め、案内を受け取った。別に試験とかは無いようだ。ただ、あたしが行こうとしている学校は、結構、授業やルールがハードだという。女子の数は少ない。
それと同時に、お華とお茶の教室にも通い始めた。どちらも舞ママの勧めだったこともあり、舞ママの紹介先に通うことになった。お華はどちらかといえば流儀や流派にこだわらない自由な雰囲気が気にいっていた。お茶は表を選んだ。彼が昔、表をやっていたって聞いたから。本当は一般的?な裏を勧められたのだけど、いくいくはお茶会とかに出られるようになったら彼と同席するのが狙い。
彼は自己流でなどと言っていたが、どうしてどうして、教授免許を持つ舞ママが舌をまくほどの腕前だった。それに加えて書画や焼物に対する造詣の深さ。舞も誘われるようにお茶を始めた。
貴方のお茶は型には囚われず、自由奔放にただただお茶を楽しむ。点てられたお茶は勿論なんだけど、何よりも貴方が器を手にし始めると時がゆったりと流れ始め、場が暖かくなる。舞ママが、安心できる、そんな風に評したことがあった。適度の緊張と適度の緩みとがあるんだって。
通い始めた御茶の教室は、男性が多く居た。いずれも年配の成功した人っていうんだろうか。先生は、老婦人といった感じの品の良い方だ。あたしと舞は若い女の子ということで、物珍しくもあったのか、皆さんからかわいがって貰えた。
時々、珈琲とかを外でごちそうになる時もあった。高校生という事で流石にお酒を誘うヒトは居なかったのだけど、一度だけ食事に誘われた。一度と言ったが、実は何度か誘われ、仕方なくだった。舞も一緒にと思ってたら、今回はあたしだけだというので嫌な予感がしたのよね。ホントはその時点で断れば良かったな。案の定、そのヒトは食事の後、お酒に誘おうとしたので、キッパリと断ったら、それからは避けられているように感じる。舞に言ったら、舞も誘われた事があったらしい。それからは必ず二人一緒でないと断る事にした。あたし達が珈琲を飲んでいる間、何人かで仕事絡みの話をしている。最初のうちはちんぷんかんぷんだったけど、パパの取ってる日経を読み、ネットを駆使し、それでもわからない時は、彼に聞いて、少しだけ理解できるようになった。
彼は、へェ、という顔つきをしていたが、優しく教えて呉れた。
一度だけ、あたしの話を遮ると厳しい顔付きで言った。
「愛君、今の話は聞かなかったことにしよう。今君のした話というのは、いわゆるインサイダー情報といって、罪になる可能性があるんだよ。
年配者と話をするのは決して悪い事ではないんだが、その手の話が始まったら、相手が気を悪くしないように席を外すなり、聞き流すなりした方がイイな。
舞君もイイかな?」
良くわからなかったが、二人共コクンと頷いた。
「そうね、二人にはわからないと思って話してらっしゃるのかもしれないけれど、そういう事を外で大っぴらに話をするということ自体、余り感心しないわね」
「男には誇張癖というか、こんな事も知ってるんだぞって、見得を張りたがる部分があるからね、仕方ないさ」
「あら、吉見さんでもそんな所があるのかしら?」
舞ママが意地悪にいうと、
「勿論。お陰で仕事の合間を縫って高校の勉強をし直し、予習に余念が無いよ」
「なーんだ!マジックの種を明かせばそういうトリックだったのね!」
舞がすかさず茶々を入れる。
「そう。結構難しくて苦労させて頂いてます」
ウソ。確かに勉強はしているのかもしれないけれど、過去問とかまで手は回らないわ。なのに、スラスラ解説できるんだもの。
その日を境にあたし達、舞とあたしは、おじさま達のお誘いを避けるようにした。偶に受けても御茶を飲んだら、ごちそうさまといって席を立つか、ギャル語で会話を始めてけむに捲くようにした。何か言われた時は、えぇ!?あたし達ワッカンナーイ!がキメ文句。
ある時、舞ママと吉見さんをお茶会に誘った。あたし達は御点前披露なんてできるレベルではなかったから、お水屋担当だったけど、こっそり二人の様子を覗いた。
舞ママは、薄い緑がかった結城、吉見さんはラフすぎない程度のカジュアルウェア、場にうまくあっている。どちらも教室で評判になった。
先生も二人の手前は別格だと評し、お正客の上をいってたと言ったので、内心鼻高々だったのに、二人の知り合いだとわかると、それではもっとお精進しないといけないわね、と諭されて傷付いてしまった。
お陰で、おじさま達もあたし達を迂闊には誘わなくなった。舞ママや吉見さんを知ってる人が少なくなかったのだ。
ある日舞が突然いいだした。
「彼と別れる!」
「突然、何よ。どうしちゃったの!?」
「だって、話がつまらないんだもの」
かいつまんで話をまとめるとこう。
見た目もイケテルし、話題も豊富、周りからも羨ましがられて、最初は良い気分だったけど、余り話さなくなったとはいえ、おじさん達がしている仕事の話や舞ママと吉見さんの会話の方が緊張感もダイナミックさもあって興奮する……一言でいえば、ま、厭きたってことよね。舞らしいわ。
「で、イブはどうするのよ!?」
「それなのよねぇ。舞様がイブに一人で過ごすなんて、あってはならないことよ!」
思わず吹き出してしまった。あくまでも舞らしい。
「だったら、孝行も兼ねて大人しくママと過ごせばぁ!」
「やぁよ。ね、ね、ねっ!」
ヤナ予感。
「吉見さん誘って三人で過さない!?」
ビンゴ!
ちょっとだけ迷ったが、
「うーん、吉見さん、なんていうかなぁー……」
「吉見さん次第ね、OK!じゃぁ、今度訊いてみるわ!」
こちらの返事も待たずに勝手に決めて!この脳天気ムスメめ!ま、どっちに転んでもあたしにはプラスかな。でもそのうち舞には釘を刺しておかないと危ないなぁ。
舞は、次の日早速切り出した。
「吉見さん、イブって何かお約束あるんですか?」
口を開き掛けた貴方を無視して、舞は続けた。
「あのですねぇ。ここに一年に一度の大切なたーいせつなイブを一人きりで過ごす若い女の子が二人も居るんです。素敵なおじさまと二人きりなんて贅沢は申しません。言いませんから、是非ぜーひ、ご一緒に過ごして頂けませんかぁ?ね、ね!」
最後はあたしにも同意を求めるようにこっちを向いてウィンクだ。
すっごい女優ね!普通の男ならイチコロなんだけどねぇ……案の定、
「持ち上げてもらってなんなんだが、今年のイブは娘達と過ごすことにしているんだ。サンタの役はしなくてすみそうだけど……済まないね。誘って貰えたことは嬉しいよ」
「うーん、お嬢さん達とかぁ。そっかぁ、じゃぁ仕方ない、愛!付き合ってよね!」
「全くもうっ。いいわよ」
ちょっぴり寂しくなかったといえばウソになるけど、ほんの少しだけ安堵していた。
「その代わりぃ、25日はプレゼント期待してまぁす!」
どこまで底抜け?それとも計算?
だとしたら負けるなぁ。本気で釘を刺しておかないと……。




