Daily 9 〜相互〜
今年もこの季節がやってくる、このために頑張ってきた、全てを出し切る…もちろん、僕らの野球が全てではない。
各スポーツが頂点を目指してぶつかり合う集大成の祭典、その名も…。
「高校総体かー…全国大会ってなると、インターハイってやつか!先輩達、どこまでいけるんだろうなー」
「部活強いからなー、応援とか行くのかな?」
「決勝とかは行くんじゃないか、まあやっぱ一番の期待は野球部じゃないか?」
「おー諸君!共に応援しようじゃないか!わっはっはー」
「えっなに、英輔応援なの?ベンチ入ってないのかよー」
「…当たり前だろー!スタンドで精一杯応援だー!先輩達、甲子園目指して張り切ってるよー!」
「あーそうか、他の部活とは日程が違うのか、総体ではないな」
ご存知であろう高校総体は六月の初旬、野球だけはやや遅い開幕となる。
「松野君は一年だし、先輩達の勇姿、見届けないとね!」
「絶対甲子園行けるさー!…多分」
「どっちだよ!…まあ敵なし!って訳じゃないもんな」
「先輩も言ってた、どっちにしろ俺は二年後のために日々練習よー」
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「お疲れっしたー!…えっ先輩達まだやるんだなー…」
「俺らは程よくだけど、凄い刺激にはなるわな」
「隼人ーいいのかなー何か頑張ってるしさー…」
「焦るなってこと、先輩方も今は自分達で精一杯なのは確かだ、影で応援して支えるのが一番」
「そういうことだよー松野君、前島君は冷静だねーさすが」
「海堂さん、ちゃんとチャンスはありますよね」
「君らには必ず凄い結果がついてくることを期待してる、まあ問題は松野君だけど」
「多分俺はスロースターターってやつなんすよ…しっかり自分」
「おいおい…海堂さんにも期待してます、頑張って下さい!」
グッと指を立てる海堂の姿に、英輔はますます向上心が湧いた。
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一方、部活に入っていない連中にとっては、この期間はどのような感じかと言うと…。
「総体っていっても俺らにはいつも通りの学校生活だわな」
「あーあー何か部活やれば良かったかなー暇に感じる」
「どうせなら応援行きたいよなー何でもいいから」
「そーそー放課後も暇に思えてくるし、困っちゃうねーん」
「お前ら二人さ、……デートでもしてきたら」
思わず横を見て目を合わす二人、バカ二人。
「麻実と?」「康之と!」
「あはは…二人とも…息ピッタリ…ふみかはどう思う?」
「とりあえず…どっか行ってこい」
「とりあえずねー…じゃあうち、先生に用あるから、戻ってくるまで考えといてー」
「おいー!…って俺任せかよー…ってか何でどっか行かないといけないの」
「さ、さあ…」「仲良いから」「ま、いずれわかるでしょ」
「アナタ達、適当スギヨ」
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「とりあえず、どこ行くか決めた?」
「とりあえず……俺の部屋!」
「とりあえず、却下、急に部屋に押し込むなんてーうちまだそんな勇気ないもーんっ」
「とりあえず、冗談だからその口調やめろ」
「とりあえず、駅前でも行く?」
「とりあえず、行くか…久しぶりだなー」
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「あれっこんなとこにカフェあったっけ?」
「あれっとりあえずのくだり、終わったんだ、何か最近出来たんだってよー」
「あれっ?とはいかないからな、まあ…たまにはぶらりとするのもいいな」
「行動範囲狭すぎなんだって、もっと色んなとこ行かないと」
「そうだなー…今のうちだなー旅行感覚で」
「あーいいねー!行こう行こう!一緒にさー」
思わずちょっとびっくりする康之、男は単純なのです。
「まあみんなでねー考えてパーっと!」
「(あらっ…)ま、まあ夏休みとかな、考えてみよう」
そして二人は新しく出来たらしいカフェへ、意外とこういう時になると会話が出てこない。
「康之さ……好きな人とかいんの?」
よく見る飲食中の不意打ち、康之もそれに巻き込まれた。
「ぶはっ!…急に何だよ……さあなーどうなんだろうな」
「ふーん…てっきりいるかと思ったー、康之って星南ちゃんとか好きそうだよね」
「…北原は確かに可愛いけど、俺が相手でもな、失礼にも程がある」
「確かにーハードル下げないとー」
「麻実はいんのかよ、何か先輩とか好きそうだよな」
「それホンットよく言われる!ところがねー、変に緊張とかしそうでさー出来れば同い年がいいなーって」
「…まあお互い頑張りましょうや」
妙な雰囲気が漂う、二人らしくない変わった形に見える。
「あれー?麻実ー?超久しぶりじゃーん!」
すると康之は麻実の少しの異変に気が付いた。
「あれっ…もしかしてちょっとお邪魔だった?」
「あー大丈夫だよ!もうそろそろ出ようかなーなんて、ね!」
「そうなんだーまた今度ね!」
そうして康之を少し引っ張る形で、カフェを後にした麻実。
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「あっごめん…何か悪かったね」
「…どうかしたのか?何かあったのか?」
「たいした事はないよ、お互いの友達同士でいろいろあっただけだから」
「そっか…麻実も大変なんだな…女子っていろいろあるもんな」
「まあね、…気使ってくれてありがと」
「俺は何もしてないだろ、まあ…間柄でも早く仲直りしろよ」
「う、うん……まあ…何とかする…」
康之の人柄は僕らとは違う、変わってる奴だが、誰よりも影で優しい愛されるもの、愛すべきもの。
「…ふーん、わかった…ちょっと行ってくるわ」
「えっちょっとどこ行くのー!?」
「トイレだよ!そこで待ってろ!」
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そして十分後、
「ずいぶん長いトイレだったね」
「いやーちょっとお腹が…」
「トイレ、向こうなんだけど…まったくこれだからあんたは」
「さっきの子、ちゃんと理解はしてたみたいだぞ」
「さあ、どうだろうなー遊ぶのは別に構わないんだけど」
「言ってたぞ、あっちの友達が悪かったらしいな、だから私と麻実で仲介して、またみんなで遊ぼうって」
「なるほどねー…まあ連絡取り合ってみるよ」
「あーあと何か最後に___」
「___わざわざ来るなんて、いい彼氏さんだね!何か麻実には勿体無いかもーなんて、連絡取り合ってまたみんなで遊ぼうねーもちろんあなたも一緒にね!」
「…まあ難しい事ではないな」
「ちょっと!その事否定することはなかったわけー!?」
「別にいいだろー、これでいい方向に進歩するなら大丈夫だろ」
「ま、まあそうだけど…(これからある意味大変じゃんかー)」
「さてと、帰りますか…女子はちゃんと見送らないとなー」
「ありがとうございますー、一応女子と思ってるみたいで」
「何かいい一面見れたからな、あーあと…ククク…撮れたからな!」
康之のスマホの画面には、大きなカップで飲んでいる逸らし目の麻実が写っている、少し盛れている。
「ちょいつの間にー!盗撮!一番しちゃダメなやつー!」
「最近のアプリ機能をなめんなよー、まあいい顔してんじゃん、奇跡のショット」
「もー貸せ!…いやー消せー!しかも…それってどういう意味だー!」
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翌日クラスにて、話題はその話。
「どうだったー康之、デートは」
「…麻実の友達に会った、カフェで面白い事あった」
「何だそれ、至って普通だったか」
「おやおや、特に何もなかったよねー…康之君?」
「え、ま、まあなー面白かったわーわー…」
「駅前は他校もよく居るからな、で、友達どうだったんだ?」
「どういう感じかー…うーん…何か…めっちゃ可愛かったん」
麻実、さすがに驚く、そして怒る?何故か知らないがそれを暖かく見守る一同。
「てかいつの間にデートしてたんだー!?俺もしたいなー…いいなーん…」
英輔は後日、隼人と一緒にスポーツショップにデートをしに行ったそうだ。
「隼人!このグローブめっちゃかっこよくねーか!?うひょー!」
「それよりも…何かお前あっちの方は向いてなさそうだな」
「えっ……あっち?…ってどっち?こっち?」
「………永遠のまわり道」