Daily 5 〜隼人〜
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「何だーそういう事かー!てっきり過去に何かあったのかと…」
「大丈夫だよ、勘違いさせましたね、まあ怪しい者ではないですから」
「見れば分かります!何せこの子は、ついついかっこいい…なんて言ってたもんだから」
「はっいやそれは、その凄いなーって思っただけで、べっ別に深い意味ではなくて…その…」
じっと見つめる前島と名乗る好青年、実は彼の正体は、野球を愛する亜星学院の一年生。
「ありがとう、後藤さんは可愛らしいですね」
「あっそんなー全然ですーわははー…」
「前島君、それ以上言うと多分倒れちゃうんで、バッティングの続きでも」
「そうですか…松野がやるんじゃないのかー練習の成果、見せて欲しいし」
「俺は基本練習ばっかだから、そんなに打てないって!」
「高校野球ではピッチャーも打撃は必須だぞー!」
「俺と前島の差が違い過ぎるんだよー…助けてよーみんなー」
「とりあえずやってみたらどうだ?やらないなら俺がやっちゃうぞー」
「うーむ…っておい!もう隣でやってる奴いるし!…普通に当たってるやないかい!」
「さすがに100ならな!金属に軟球だと、さすがに当てるだけで飛ぶわ」
「へぇー修一詳しいねー、女子でもコツ掴めば出来そう?」
「それは前島君に聞いたらどうだー?」
「えっああ女子でもそれくらいなら問題はないと思いますね、まあ自分はもう硬球を使ってる身だから、さっきまでやってた感覚とは違う所がありますけど」
「じゃあやっぱ前島君凄いんだねーさすがだー!」
「いやいや、松野も現状は同じ事が言えるし、軟球打てないと高校野球は多分無理だと…」
「うっ…ならやってやるわー!130だの150だの何でもこーい!」
「絶対無理そうだよねー」
さすがに美愛も頷いてしまう、そう言われながらも、バッターボックスに入る。
「そこっ!何か言ったか!…よしこーい!」
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何打席か連続でやってみたが…。
「はぁはぁ…何で…なんで何も言ってくれないのよーん!」
「思った通りになったな…全部ボールの下振ってるし」
「松野、とりあえずよく見てもう一度」
「くそー!もういっちょ!」
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「もう一回」
前島の顔が薄れていく。
「もう一回」
「見えてきた…大丈夫だぜ…」
「大丈夫じゃねーな、英輔の尺、長いよー巻いてー」
「もう一度!」
「女子から見たらさすがに…ダサいよねー…ククッ」
思わず小笑いが止まらない一同。
「いやーん!当たらねー!」
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「英輔と前島君、こんなに違うんだねー」
「ま、まあ松野君も頑張ってるんだからー、ね?みんなそんなに攻めずにー…」
「うー西園寺ありがどーうれじいー」
「まあ松野、何とかなるといいな」
英輔は疲れきった顔をしながら練習を終える。
「あっ前島君は他の所行かなくていいの?」
「あー休日だから、何となくバッセンが安く済むなーって思いまして、ここに来たって感じですかね」
「何だよー寂しいじゃねーかよー、野球以外考えなかったのかー?」
「確かに監督や先輩もそう言ってたけど、常に上目指すためにはって思うと…すぐそばに置かないとって感じてさ…」
(真剣な眼差し、意識が凄いなー…ホントにかっこいいなー…)
「って思ったでしょふみか!」
「なっ!かっ勝手に人の心を読み取るなー!」
「ふみかはわかりやすいからねん、麻実様には何でもわかるのだー」
「…それも大事だよなー…まあでもさ!…」
みんなが英輔のほうを向く、英輔の真剣?な顔には少し驚いたようだ。
「何かを目指す時に一人では絶対出来ないと思うんだ…っほら今もこうやってみんなに支えられて教えてもらってる訳だし、遊ぶことも自分の成長に繋がるって…俺は信じてる!ま、まあ俺が言っても、説得力無いと思うけどなー…あはは…まあとにかく、知らない世界からもきっかけによっては進化の可能性を秘めてるって感じ!…あれっ俺、今けっこう良いこと言った!?わーいわーい!…ん、おーい…」
英輔の良いところが出た、ちゃんと耳を傾けるみんなが優しかったのか…どうか。
「松野君らしいね、私もそう思うよ」
「さすが西園寺!味方がいて良かったー!」
「でも…さすがにあの姿は、かっこ悪いけどね、えへへ」
思わずコントの転け方をする英輔、そして少し遅れて一同。
「美愛の言う通りだねー…前島君、一緒に遊びましょ!」
「…ふふっ…そうですね…ありがとう」
「ふみかからも何か、ほら!」
「えっあっそうだねー…うーんと…一緒のほうが…絶対楽しいよ?…うん」
「わかりました、後藤さん何しますか?」
「えっ二人で!?そうだなーえーっと…」
「前島君、まずはふみか任せました!後でフットサルしましょ!」
「えー!みんなちょっとー!…」
「後藤さん、バドでもしますか?」
「えーっと…はい…」
一同に笑顔が溢れる、数名ニヤニヤの奴はいるがとても笑っている。
「とりあえず、俺は90からだな!」
「美愛ー下のアミューズメント行こー!カートやろー!」
「おっそれなら俺も、そういや下もあるの忘れてた」
「ようやく当たるようになってきたー!…んっ!?誰もいなーい!」
楽しむことの良さを確認しあった出来事。
(そういや前島の名前って何だったっけなー…うーんと…あっそうだそうだ!)
英輔自身は前島に名前を覚えられているのだろうか…。
(よし、今度名前で言ってやろうかな!バッテリーになるかもしれないし…)