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HEROES  作者: 工藤カズナリ
33/34

Subject 1 〜球春〜

到来、今年も野球のシーズンがやってきた。


「北條舘高校、六年ぶり二度目の春、甲子園の頂点に立ちましたー!圧倒的な打撃力、そして二年生エースを用し、岡本監督の采配が優勝へと導きましたー!」


「これは夏も存分にやってくれると思いますねー!連覇も充分ありえますねー!」


「……すごいなー…特にエースと四番、俺らと同学年なんだもんなー…」


「この二人は一年の時から有名だよ、それに五番も二年生だし」


「全国にはすごい連中がわんさかいるって事かー、やっぱ甲子園行くってすごい事なんだな!」


「全員そこを目指してる、亜星も…今年は例年とは違うと、明らかになってるから、俺らも頑張らないと」


英輔達は二年生になった、後輩が入学、新たな段階でのスタートとなる。


「どうだ海堂、今年の新入部員はいかがなものか…私的には活きのいいメンバーがたくさんいると思うがな」


「活きなら二年生も負けていませんよ、確かにレベルは高いと思われますが…」


「…やっぱ後輩達もすごいなー、そりゃーそうか…俺とは入った状況が違うのか…はは…」


「おい松野、それは事実ではある…だがあまり学年は意識しないほうがいいぞ、気抜いてたら簡単に立場変わるからな」


「そうだよなー…まあ館山は大丈夫でしょー、俺も頑張らないと…」


「特に投手はなかなか良い、あそこにいる竹中とかは、大岸さんや海堂さんにとっても…亜星に来てくれたのは嬉しいだろうからな…」


「そんなにすごいんだー…いやー参っちゃったなー…はあー…」

「うおー!俺にも後輩が…男子が来たー!三年の向井だー、一緒に頑張ろうー!おー!」


「わー!私にも後輩ができるなんて…二年の大澤香奈です!…みんな可愛いなー…」


一年マネージャーとして、男女に一人ずつ入部、それは嬉しいだろう。


「向井と大澤が暴走してるけど…いいのかアレ?…特に向井」


「まあ気にするな…あいつらのポジションは俺らより大変なんだ、今日くらいはそのままにしとけ」


そして亜星新体制の部活がスタート、では投手のところを覗いてみよう…。


「やっぱ海堂さんスゲェー…なんかオーラも違うし…」


「俺、館山さんと同じ中学だったけど、フォームとか変わってなくて何か嬉しい」


一年生は小さな声で様々な会話が飛び交う、するとその後…ある会話が出始める。


「……あの先輩…まだ投げ込まないのかな?…ずっと独自でやってるけど…」


「誰か知ってる?…俺らは知らないなー…地方とかなのかな?」


「君達ー、練習中に必要ない会話は厳禁だよー、気をつけてね」


「あっ海堂さん!…すっすいません!……続けるぞー…」


「あの先輩…が気になるようだねー…まあ無理もない、知ってる人はほぼいないからね」


「…そうなんですよね…何か、一人で変わったメニューこなしてるから……なー!?」


「…それなら、本人に直接聞いてみるといいよ、いい答えが返ってくるかもしれないからね」

「お前がいけよ…話出したのお前なんだから…ほら!」


「…わっわかったよ……じゃあ……あっあのすいません!」


「…えっ俺?どうかしたの?…あっ一年生だね!」


「…はい、あのー…何で一人でやってるんですか?…ケガとか?」


「あー…ケガはしてないけど、先輩に言われていることをしてるだけだよ」


一年生、まだよくわかっていない模様、すると英輔は…。


「俺の練習はこんな感じだから、海堂先輩とか館山とかのを見たほうがいいよー」


「…わっわかりました…頑張ってください……行くかー…」


一年生は元の場所に戻っていったが…竹中だけは少し気になっている様子だった。


戻るとすぐに館山が一年生に声をかけた、その話になる…。


「あー……ふっ、まあ…ああいう練習が必要なんだろうな、もう必要ないと思うんだけどよー…松野はあれを入部した時から毎回やってるらしいけど…よく飽きないなーとは思うよ」


「毎回ですか!?…松野さん…でしたっけ、あの人ってどういう感じで…」


「そうだなー……まあ簡単に言うと、初心者ってやつだな」

「だからあれなのか、でもよくやるよなーそこはすごい、少し懐かしい感じもするし」


「あっ!…あれをたまに海堂さんが見てるのかー!…やっぱすげーな海堂さんって…」


「……見方が変わったでしょ?両先輩の実力や、君達の見解とかがさ」


「えっ…まっ前島さん、その…何というか…亜星ってすごいっすねー…はは…」


「特に、松野さんだけは先輩として…見れないものが心のどこかにあるだろうし」


「いっいえ、そんなことはないですけど…大変なんだろうなーって…」


「……じゃあ実際、見てもらおうかな…思い込みはよくないからねー……英輔!」


ここまで一言も発していない竹中は、何を思っているのだろうか…。


英輔と隼人はブルペンに入り、何やら話しているのだが…。


「えー!?…何で、見せるものないと思うけど…あの二人の投球見たら充分っしょー…」


「とりあえず…混ぜながら数球、いつも通りに投げてくれればオーケー」


「ん?松野のブルペン…いつもより早くないか?何かしたのか?」


「…前島君に火がついた、と言えばいいのかな…まあその後は僕が説明しとくかな」


早いキャッチボールを完了し、英輔のピッチングが始まる。


「君達…気になっている先輩のピッチング、いろいろな感想があると思うけど…僕が……彼の保証人だよ」


(まあ…いつも通り…えーじゃあ真っ直ぐでいい…らしいね、じゃあいきまーす…)


「!?……フォームが!……えっ……まっマジ…」


一年生投手は、英輔のピッチングに…驚いた、軽やかに投げているようで、とても重く早く感じさせる球、隼人はチラリと一年生の方を見ていた。


「彼は…キャッチボールを丁寧に行うところから始めて…僕が掲げた課題や目標を少しずつ達成してきた…時にはスランプもあった、制球難もあった…それを自ら信じて、相棒、仲間を信じて、今の彼がいる…正直、僕の言った練習はもう必要ないところまできているにも関わらず、常に初心で野球を、ピッチングを楽しんでいる…技術や能力はまだもう少しだが、この投球が来年どうなるかを考えたら…わかるよね?元のセンスとも融合した、ものすごいピッチャーになれると僕は信じている…だから保証人ってわけね」


「……ちょっと改めてランニングしてきます、今更ですが…」


「俺も…行こうかな…」

「何か…甘かったかもな、俺…松野さんのピッチングも参考にしようかな!」


「亜星の強い理由、わかった気がした……あれっ?竹中は?あいつはどうしたんだろ…」


その竹中はまだその姿を見ていた、そして英輔がブルペンを終えると…。


「……えーっと、あれっ何君だったかなー、ちょっと待ってね!思い出すから!…んーっと…」


「……竹中です、松野さん、一緒に練習させてください、お願いします」


「へ?…あーでもね、これは個人的なメニューであって、その後ならー…」


「最初からお願いします、明日から宜しくお願いします…失礼します」


「あらー…彼が竹中君か、あんな事するレベルじゃない気がするんだよなー…」


「いいじゃんか、英輔も何か吸収できるかもしれないぞ、それに竹中は多分、英輔の何かにいち早く気付いたんだろうからな…」

翌日の練習時、適性も兼ねて、ブルペンでは話し合いが行われていた…のだが…。


「ん?竹中はどこ行ったー?あいつの投球も見たいんだけど…知らねえか?」


「竹中なら向こうで何かしてましたけど…呼んできますか?」


「……大丈夫かな、彼は多分…松野君と一緒さ、後で僕が見に行くよ」


その竹中はやはり英輔と共に練習していた。


「竹中君くらいのピッチャーが…俺とこんな事してていいのかなー…」


「構いません、海堂さんの教えもあるなら尚更です、でもひとつ聞いていいですか?…何故野球を始めようと思ったんですか?」


「よく聞かれるんだよねー…まあ頑張れるものを見つけようとしてた時に、野球に出会ったからかな…一年経つけど、徐々に気持ちが変わってきたのもあるね!やっぱやるからには楽しくないとさー!」


「……なるほど、自分も…そういう野球に出会ってみたいと思って、海堂さんのいる亜星に来ました、そうしたら…もっとすごい面白い先輩がいて、亜星で良かったと思います」


「俺面白いかなー!?…俺から教えれる事とかは多分ないから、無理はしないでね」


「…既に学んでます、あの頃の気持ちに戻って…やろうと思います」


「はー…とりあえず少しずつ早くしていこっか、よーい…どん!」

「何かあの二人が練習してるのは…どう思う?…俺には違和感があるな…」


「まあいいじゃない、これも伝統になるかもしれないし…亜星のスタイルとしてね…」


「…竹中が障害物競走みたいな事してんのは…何かなー…」


「そう?…僕もやってこようかなー?…しばらくあれやってないからなー」


「…はいはい、ブルペン戻るぞー…やるなら一年にやらせるのがいいかもな…」

そのまま練習が終わり、帰宅時。


「お二方、一緒に帰ってもよろしいですか?」


「竹中は…クールだよな、まあでも実力が確かなのはわかってるからな」


「ありがとうございます、前島さんがいるのもあって…松野さんがいるんですね」


「まあそうだなー…まさか英輔がここまでやってくれるとは思わなかったなー前は」


「竹中君のピッチング、すごかったなー…この間まで中学生だったんだよなー…」


「そりゃーそうだろ、竹中はスカウトも実際動いてたらしい、天智にも顔出したりしたんでしょ?」


「まあはい、天智は…確かに強い学校だと思います、でも…自分を変えるなら、断然亜星かなと」


「目指すは海堂さんだもんな、だから学年が違っても、ライバルなのは変わりないってこと、お互い刺激し合って頑張ってほしいよ」


「ライバルかー…よーし、一応先輩として負けんぞー!よっしゃー!」


「今の自分を考えると、確実に松野さんのほうが上です、だからまずは…松野さんからも何かを学ぼうと思っています」


「変なところは学ばないようにな、こいつ基本おかしいから」


「バカなのは認めるけど、おかしくはなーい!…はははー……ん?ああー!」


英輔が誰かを見つけて、その人のもとへ駆け寄る。


「……あっ松野君!部活帰り?お疲れ様!…あれっ一人…ではないよねー」


「西園寺、こんな時間に珍しいなー!…あっほらほら隼人もいるよー」


少し遠くで隼人と竹中が話し始めていた。


「あの人、松野さんの彼女ですか?可愛いですね、亜星の人なんだ」


「あっいやそれは多分違うかなー…同じクラスの人だよ、俺も面識がある……あっ西園寺さんこんばんは」


「お疲れ様、あー理由だっけ?ただの放課後に遊んでの帰り道だよ、奇遇だったね」


「…なんだそうなんですか、お似合いなのでてっきり彼女かと…」


「ん?何の話だー?彼女?あー隼人の話かー!?ほーほー…」「違うわ、お前だ」


「どうも、一年の竹中です、先輩方と仲良くさせてもらっています、えーっと彼女さんは…」


「えっ!彼女って…わっ私は彼の彼女じゃありません!…仲のいい友達です!…」


「…そうだぞー竹中君!…でもめっちゃ可愛いでしょ!?学校ナンバーワンなんだぞー!」


「…納得です、こんな先輩もいるとは…やはり亜星はすごいですね」


「…またそういうのすぐ言うんだから!…君もそこは納得しなーい!」

英輔は美愛と帰路を進み、話をしていた。


「へーそんなにすごいんだあの子ー…何か松野君の事慕ってる感じだったね」


「いやー俺もよくわからないんだけど、一緒に練習したいってさー…ホントに謎だよ」


そうして部活の話をしながら、英輔がふと違う話題を切り出す。


「そういえばさー…アレ、どれにしたー?」


「アレって?…何かあったっけ?…」「アレだよアレ!」


「…えー…アレってもしかして行き先決めるやつのこと?」


「そうそう!…おっと!まだ言っちゃダメだから!…もう決めてる?書いた!?」


「まだかなー…すごい迷うなー…みんなはどうなんだろうねー、松野君は?」


「俺はもう決めてるけど、言わないでおくよ!…西園寺が決まったら言うわ」


「えーちょっと待ってよー!…とりあえずあの用紙出そうかな…」


そしてある用紙を手元に、考え始める美愛。


「んー…これって、自由に書くところもあるけど…大体海外になるよね」


「多分ね、場所がバラバラになると思うし、その四番は無しかと」


「そっかー…でもヨーロッパとかいいなー…あっパリとか!」


「採用されません、個人的に行きましょうー、それか今度みんなで行きましょう」


「それは多分無理じゃないかなー…あーどうしよー…これだと、麻実とかは絶対寒いー!とか言いそうだし…」


「俺もどちらか迷ったなー、けどやっぱ季節的にもこっちのコースっしょ!って感じ」


「そうだね、これだと、卒業旅行とかでも行きそうだし、ふみかとかは寺とか神社ばっかー!とか言いそう」


「隼人は好きそうだけどね、まあ多数決だし…圧倒的にこれかと」


「…松野君、絶対これでしょー!もう言われなくてもわかっちゃった」


「…だから、西園寺もこれにしようぜーい!お願いしますー、班とかも一緒に回ろうよ!」


「自主研とかのかー!…何か賑やかになりそう…」


「よし!…じゃあこれで決まりだな!…あいつらにも一応促しとかないと」


「それなら事前に調べとかないとね!あとコース的に後半は九州にも寄りそうだし」

「何気ホテルとか旅館も楽しみだなー…オーシャンビュー的な」


「全員のルートと自主研のルート、被らないようにしないと」


「わっ!ここめっちゃいいじゃーん!時間的に行けそうー!?」


「そこ行くならついでにこっちも!美愛ー!大丈夫そう?」


「……やっぱりみんな行きたい所多いよねー…困ったなー…」


「お土産ー、これとこれかなー…あっそっか、後半もあるんだった…」


「旅行かー…いやいや、これは列記とした研修みたいな…感じじゃねーよなこれ…まあ、待ってろよー……行くぜ沖縄ー!」


「あっあと少し九州な、クラスは違えど…俺も楽しむつもりだよ…一つの思い出として…」


そうして青空のもと、飛行機は空港を後にした…。


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