Daily 2 〜部活〜
この英輔達が通っている亜星学院高校には野球部があり、ある人物が入部してから強豪校へと成長していった。
順当に力をつけていく亜星、大岸監督率いる野球部は県内でライバル校は一つのみの状態だった。
その野球部に…あのバカは入部しようとしている。
「よーし、じゃあ行くかな!」
「英輔正気かー?やめとけって」
「さすがにお前が入るのは厳しいだろ、それに遊び相手がいなくなるのはなんか嫌だな」
「まあまあそうね、遊びたいが野球もしたい!だから行くんだ…ふがっ!」
思わず康之が消しゴムを投げつけてしまったようだ。
「むーりだって!げ・ん・じ・つ見ろよっ」
「だったらさーとりあえず体験入部的な感じで行ってみたらー?」
麻実達が聞いていたようだ、気になったのだろうか。
「そうだよなーさすが麻実!」
「よく言うよなー麻実も、こいつが大丈夫だと思うか?」
「それってどういうこと?」
「いやっこいつやったことないんだぞ…」
「えーっ!!!」
「…………うちがバカだったか…ごめん発言撤回!」
英輔はある意味初心者、軽くキャッチボールが出来るくらいのぽんこつ、よくあんなことが言えたものだ。
「みんなしてそう言わないでよー!やる気出ないじゃんかー…」
「やる気とかの問題じゃない!!」
この時だけは意見が合致したようだ、無理もないだろうと思われる、相手をしてくれるかもあるだろう…。
「でも野球、楽しそうだね!ほらっみんなかっこいいよ!」
窓際で遠いグラウンドの練習を見ていた美愛が口ずさんだ、みんなちょっとびっくりしていた。
「ほーどれどれ…確かにキレキレだーねー、けどさー初心者があれ出来るかねー」
「松野君、運動神経良さそうだしいけるんじゃない!?」
「そう言ってくれると何か嬉しいなあーあー!!」
さすがに少々照れてしまう初心者野郎、褒められるのに弱いバカである。
「てかあの姿と英輔が…マッチしないな、似合うかどうかの問題も浮上」
「違和感ありまくりだねー、でも面白い姿見れるかもしれない…ふふっ」
「まあ影ながら応援するか」
「そうね、何かあったらすぐ言うんだぞー!」
なんだかんだでみんなも少しの期待は持っているらしく、ここはやはり思いやりが出ている。
「よし!やるぞー!西園寺、ありがとね!」
「頑張ってね!」
「うん!…ってもう練習してるのか!やばっじゃあ行くわ!!」
英輔、初陣である。
「…まあ大丈夫っしょ!俺らは帰るわ、また明日」
「いい報告を聞けるといいね、よし帰ろう」
「美愛、行くよー」
一番心配と期待を持っているのは、もしかしたら美愛かもしれない。
グラウンドへ行くと一年生がずらりといた。
「わーおすごいねー…」
「んっ?新入部員か?昨日はいなかったような…」
「あっすいません!これから頑張ろうって思ってて…」
「なるほど、私が監督の大岸だ、よろしく頼むぞ」
「よろしくお願いします!あっあの…一応投手志望なんですけど…」
「ん?じゃあ、ブルペンに行きなさい」
「わかりました!ありがとうございます!」
さすがに初心者というのは聞かれなかった、英輔の雰囲気的にもそうだった、意外とマッチしていたようだ。
ブルペンでは学年問わず数人が投球練習をしていた。
「おーすげー!!はえー!!」
すると一斉に注目をあび、視線が一点に集まった、こんなこと言うバカは他にはいない。
「あれっあっあのーここに行けと監督から…」
「あー新入部員か!俺は安達、投手キャプテンだ!よろしくっ」
「はい!松野です!どうすればいいですか?」
「んーじゃあちょっと待ってね」
すると安達が投げていた一人と話して、その人がその場から離れた。
「ここで投げてみてくれる?キャッチボールからでいいから」
「わかりました!…えーっと…」
「高峰だ、軽くでいいぞ」
「お願いします!」
相手のキャッチャーは二年の高峰直隆、強肩強打の凄腕だ。
キャッチボールは慣れているのか、しっかり投げている。
肩ならしが済んだところで
高峰が座って構えており、安達が指示を送った。
「よーし松野君!とりあえず好きなように投げてくれ」
「わかりました!あーっ何か緊張するなーっ…わわ」
明らかに緊張感が無いように見える、一人だけ浮いているようにも見える。
「真っ直ぐ行きまーす!」
さあ投げてみた、投げたというのだろうか。
「えっ…」「おー…」「あっあ…あー!」
英輔が投げたボールの行方は…。
球はバックフェンスに思いっきりいい音をたてて到達。
……「あらっ手が滑っちゃったなーあははー…」
「松野君…ご苦労だった…もう大丈夫だぞー!」
「いやっ違うんです!こんなんじゃ…えっ?」
「俺と交代」
「あらーあらーんー…」
英輔は相手にされるものではなかった。この様では無理もない。
「ゴホンっ!とっとりあえず…今なら違うポジションも…」
「お願いしますう~俺ピッチャーがイイんですう~」
「しかしだなー…他のみんなとの差が…」
「別にいいじゃないですか先輩」
「んっ??海堂しかしな、これでは…」
ひそひそ話をし始める二人。
「正直あれはヤバイぞ…うちの学校のレベルではないような…」
「そうですかねー僕には活きがあって良いと思いますが」
「それだけではダメさー…まあそこまで言うならお前が面倒見てやってくれ」
「……わかりました。いいでしょう」
(全く海堂、どういうつもりだ…ただの優しさかあれは…あいつが目を向けることは中々無いのにな…)
「松野君!ちょっとおいで」
「海堂…先輩ですよね!何ですか?もしかして…俺のこと相手してくれるんですか??」
「そういう事ではないかもね」
「しょぼーん」
「ただ…あの一球、ちょっと気にかかってね…とりあえずキャッチボールするかい?」
「はっはい!お願いします!」
・
・
・
「よくするのかい?」
「えっ?あっはい!暇つぶしにって感じですけど…」
「キャッチボールは練習の一つだからね。大事だよ。これだけでも大事なことを教えてくれる、でもただ投げるだけの練習は野球部には必要ない、意識しながら投げる、そこは分かっておかないといけない」
(確かに何か先輩のボール、一球一球が何故か重く感じる…これが俺との違いってやつかな…)
「と言っても初心者っていう松野君の個人的スタイルには難しいかもしれないけど」
「えっ!?先輩わかるんですか?」
「多分みんなわかってると思うけどなー。まあ確かにあれは…ヒドすぎるからね、あははは」
「心の中で笑ってたんですね…先輩は味方だと思ってたのにー!」
「えっ勿論味方だよ、野球部みんな味方さ。その中でヤケに喰い付いたのが僕ってわけ」
「どうしてですか?…こんな俺みたいな初心者相手してても…」
「わからない、わからないけどわかる気がした、つまり…勘…かな」
「そうなんすかー…勘かー、でももしかして俺って待遇良かったりして…ぐふふ」
「その分厳しくいくぞって事、そういうことだから松野君にはまだブルペンは早い」
「大丈夫ですよ!頑張ります!!」
「じゃあとりあえず僕と同じメニューをしていこうか!」
「了解っす!」(よし!やってやるぞー!)
「僕は済んだけどまずはランニングから!外周してきなさーい」
「えっな、何周っすか…?」
英輔は海堂に立てられた指の本数に、
「×2ね」
驚いた。
「それは死にます!」
「特別に加減したつもりだけど…」
「…先輩、結構なSっぷりですね…」
「こういう後輩いじりは嫌いではないけど」
「後で恨みますよ…まあでもそういうのがモテるんでしょうね、きっと」
「そんなにモテないさー」
「絶対ウソだーー!!」
「いいからレッツゴー!」
(くそー!…まあ今日も良い天気だし頑張れそうな気がするなー…)