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HEROES  作者: 工藤カズナリ
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Daily 17 〜三興〜

新人戦は地区の高校で戦うため、亜星はあの強豪と戦うことはなかったが、今の自分達を知れた大会となった、何より海堂の活躍で地区優勝をあげることが出来たのは、一つ大きな称号となった。


「今は素直に喜ぼう!天智との決戦はまだまだ先だが、十分戦えることを証明出来たはずた、おめでとう」


一同が笑顔に包まれている中、海堂の姿が見えない、英輔はそれに気がついた。


「先輩どこにいるんだ?…あれっ隼人もいない…ブルペンかな」


英輔がブルペンに向かうと、キャッチボールをしている二人がいた。


「いよいよこれからだね、この経験を元にさらに頑張らないとね」


「普通に優勝してしまったので、改めてこの学校は凄いなって感じました」


「亜星は自分達の野球を貫き通す、それが大事だね…さあて相談したい球種だっけ?」


「はい、利き腕は違いますけど、あいつに投げやすいものというか、打者を抑えやすいものというか…」


「松野君はストレートを活かせるものが一番だよ、前島君がリードしやすいことも大切だ」


英輔は二人の会話が聞こえて、自分のことだと判断した、様子見で聞いてみるようだ。


「例えば、これとか…受けてくれる?」


海堂が選んだ一球目は、本人も得意としている球種である。


「……スライダーですか、これは確かに必要ですね、それにしてもやっぱキレが凄いですね…」


「僕も頑張ってるんだよー、じゃあ…あとこれかな?…」


海堂が選んだ二球目は、試合ではあまり多くは投げない球種らしい。


「…ん…うわっと!やっぱわからないまま手元に落ちると怖いですね…サインミス気を付けよ…」


「僕は普段、タイミングを外す感じだから、フォークは本当にたまにだね、あまり落ちないし」


ここまで二球種はオーソドックスといえばそうである、どんな球でも、完璧に投げ分ける事が出来れば一つの武器になる、さあ三球種目は何だろうか。


「あともう一つか…うーんカーブでもいいし、遅い球を入れるのもありだけど…」


「海堂さんの球種をみたら、やはりそうですかね、活きると思います」


「…いや、松野君は僕を超えるんだ、だとしたら違うものではあるけど、似たような変化の球を習得すべきかもしれない、それでさらに自慢の真っ直ぐが素晴らしいものになる」


「だとしたら…プロでもよく見る…あれが理想ですか?」


「僕も今はあまり変化しないけど、いつか習得して投げてみたいと思っているんだ、左にずれて右にずれて…」


「そうなると、ある意味…四球種ですよね…」


「まあまずは基本の変化球を投げれる事が大事、そこから範囲を拡げてみたらどうかな?」


「わかりました、良くなってきたら海堂さんに評価してもらいます」


「これで僕より変化してたらどうしよ、あはは」


英輔も変化球は知っている、やはり三つ目の球種が気になったようだ。


(先輩が期待してくれてる…絶対に投げれるようになってやる!)

翌日、早速昨日の話を慎重に考える英輔と隼人、新たなステップだというのに案外のんびりしている。


「隼人がこっちにくるなんて珍しい、まあ丁度俺も話がしたいところだったから」


「昨日海堂さんと英輔の今後の教育方針を決めたんだ、それでやっぱ真っ直ぐだけのお前は、正直まだ全然使い物にならない、だから変化球の相談をしてたんだ」


「確かになー、でも投げてみようと思って投げても全然変化しないからな…まあなるほど」


昨日の話を盗み聞きしていたので、どのような考えを持っているかは大抵わかっている、それをふまえた上で隼人は事を進める、変化球を発表していく。


「とまあ二つは普通にそれでいいと思うが…三つ目は逆に何がいいか聞いてみてからだなーって」


「うーん、使えるようにするなら基本でもいいんじゃないかー?」


「それじゃダメなんだ、英輔はもう基本とかそういう問題じゃない」


「えっじゃあ何かすげーの取り組めってこと?俺にかー…先輩は何て?」


「とにかく、目星はつけておくけど…なるべく英輔が決めてくれ」


そうして隼人がクラスを後にした…しようとしたのだが…。


「あっ前島君ー!英輔に用でもあったのー?…んっあいつ何か険しい顔してんなー」


「必死に考えているところです、ほら、橋本君や森岡君もさすがに近づく事が出来ない程真剣に」


「遠くから見ると面白いねー、あっ二人共!前島君来てるよー!」


すると目が合ってしまった二人、何か違った空気になってしまうのだ、美愛はあえて斜め後ろに移動。


「英輔…と話してたのかな?野球部も大変そうだね」


「まああいつも今戦ってますから、サポートしないと…新人戦も終わって後はひたすら練習です」


「あっ優勝おめでとう!…見に行けば良かったかなー…」


「いいえ、そんな気持ちで充分ですよ、ありがとう……あっ後藤さん、ちょっといいですか?」


すると少し離れた所へふみかを連れて行く隼人、お前も充分戦っているぞ。


「えっなになにー?…何の話してるんだろ、めっちゃ気になるー」


「邪魔しちゃ駄目だって、最初そう言ったの麻実でしょ」


しかし、顔を見る限り明らかにモジモジしているふみか、普段は見せない顔が出ている、すると隼人は自分のクラスに戻り、ふみかも戻ってきた。


「ふみかちょっと!何話したの!?前島君から何か言ってきたりとか…」


「うん…うん…そうだね…うーん…ん?えっあー何だっけ?」


「おーい!しっかりしないと!嬉しいことなのはわかるから、ふみか頑張った!」


「どうしよ…あーどうしよー!えー私どうしたらいいーちゃんと知識知らないよー!」


「何よくわからないって!うちにもわかるように説明して!」


「…誘われた」「えっ?」


そして急な大きな叫び声に、クラスも廊下も何があったんだと思うような雰囲気になり、さすがに英輔も体が飛び上がり、康之は注意しながらもその事が気になったらしく、話を聞こうとする。

「前島君が…でも何にせよそれってデートだよね!?」


「前島君らしい提案というか何というか、それはまあデートだな」


「えーもう何か思わずはいって言っちゃったし…てか二人でいるのも大変だし、私…野球詳しい訳じゃないし…あーどうしよー!」


「まあ…詳しくなくても、一緒に見る楽しみを分かり合える事が一番の目的よ!それに絶対教えてくれるだろうし、ふみか…これは大事だよ!チャンスだよ!」


「それっていつなの?凄い人多そうだよね」


「日曜日の昼過ぎからって言ってたかな…普段の人の数よりは多くないかもしれないとかとか…」


「前島君も男だなー、同じ男として尊敬するわー、選択も彼らしい」


「確かにー絶対楽しそうだし、ボール飛んできたりしてさー何より距離感いいじゃーん」


「今の私には近いんだって…しかも観に行ったことないからどうしたらいいか…」


「だからこそ楽しまないと!初デートは気にせず楽しむことが一番!」


「服装とかさーいろいろ考えるじゃんかー、あっ英輔的にはどう?」


「あいつは今、必死に勉強中なんだと、課題が出たんだと…まあ男の意見としては、ラフでもデートに見合った感じで行けば大丈夫っしょ」


「それが難しいんだって…待ち合わせ、緊張しそう…」


「応援してるよ!せっかく前島君が誘ってくれたんだから、楽しんできてね!」


「美愛ーありがとー私頑張るー」


初デートは隼人らしい考えを持ったものになりそうだ。


(隼人のやつ、いつの間に準備してたんだ…まあ言ったのは俺か、でもいーなー俺も行きてーなースタジアム観戦…やっぱプロのプレーは間近で見ないとさー)

「うちも行ってみたいなー男子と、何か面白そう」


「じゃあ暇人同士で行きますかー!…って麻実わかるのか?」


「サッカーのほうがどちらかというとわかるかも、じゃあ駄目だ」


「ほーサッカーねー、ここら辺だと川崎か湘南のチームとかかな」


「へー修一詳しいね、どうせなら代表戦とかをみんなでパーっとさ!」


「確かにな……あーそういえば明日誕生日だよな麻実って」


「あれ、そういえば、自分でも忘れてたー…なんでわかってんのー?」


「前に話してたろ、さすがに覚えてるわ」


「麻実の誕生日、ふみかのデートの衝撃で消えちゃってたね…」


「ごめんなさいねー…ちゃんとお祝いしますよ」


「まあ盛大でなくても気持ちで充分っす、ありがとうね」


「来年はちゃんと盛大に祝わないとな、大事な仲間として」


「康之が覚えてたらの話でしょ、多分無理だわなー」


「俺は大丈夫だ、忘れる訳ないわ、みんなも絶対覚えてるって」


「……ふーん、じゃあ責任は康之に…でオーケー?」


「うむ、みんなちゃんと頼むぞー!うん…これで良し」


「ヘンなやつ…それじゃあ……えーっと康之、何色好き?」


「へっ?俺は青だな…何でだ?」


すると机の中から何の為に使っているかわからない折り紙を出した麻実、まあおそらく普段の使い道としては…。


「あー!それに書いて飛ばしてるんでしょ!麻実のこれ困ってるんだから!」


「美愛には少しだけだって、一番多いのはあの浮かれてる子だよん」


そして青の折り紙に自分の誕生日を書き、手渡す麻実。


「これ、責任者として分かる所に貼るなり入れるなりしといて!」


「えっ!なんだこれ…なんか変な…契約書みたいだな…」


「まあそんな感じ、んでその内容を今度みんなが集まる時までにしてもらいまーす」


「これっ…どういうことだよ…んー…」


「何て書いたのー?また無茶な事でも…」


「まあそれは責任者とうちだけの秘密ー、あっあと内容の変更も随時あるからねー」


「未来がわからないぜ…軽い冗談としか思えねー…」


すると閃いたのか仕返しなのか、康之も行動に出た。


「あっうちの折り紙ー!何でも使う訳じゃないんだぞー!」


「まあいいだろ…軽いものだから」


麻実は康之の使っている自分の好きな色を見て驚いた、それにしても仕返しなのか…本当にそうなのか。


「…そんな顔されてもな、前に言ってただろ、そういう事…とりあえず二枚な」


「黄色とオレンジ…ってか何書いてんのさ?…変な事書かないでよ」


「変な事には変なもの、同じような内容だわ…それに二色だから倍返しだ!ってことで」


「何かどっかで聞いた事のあるフレーズ…まったく何書いたんだか…」


内容を見た麻実は…あれ、何だその顔は、さすがにその顔には美愛も笑っている、クスクス、そしていろいろ康之に言い始める姿は新鮮そのものであった、しかしどんな内容だったのだろうか…。


(あいつー…何書いてんだか…絶対、責任者同士の秘密にしないと…何さコレ…あのアホ…)


(あー日曜日とりあえず駅で待ち合わせしてから…あー前島君どう来るかな…合ってないとーあー!!)


いろいろ男女の間では、大変な出来事が山ほどあるのである。


「英輔、青春は野球だけじゃねーぞ」


「修一…俺だって…俺だってなー……そんくらい見たらわかるっての!」

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