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HEROES  作者: 工藤カズナリ
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Daily 11 〜基地〜

ひとつの夏が終わった、亜星の歓喜はまだ早かったようだ、学校に戻ってきたが、みんなが暖かく迎えてくれた、最後のミーティングにて…。


「みんな…よくやった、これが高校野球なんだ…私についてきてくれてありがとう、感謝する」


思わず涙が溢れる部員もいる、負ければ終わりの夏、熱い夏。


「二年には負担をかけた…決して誰も悪くない、全てを出し切ったんだ…安達」


「…アクシデントが自分に来るとは思わなかった…海堂には本当に感謝する…俺らの分もこれから頑張ってほしい!」


三年生はこれで引退、想いが強い分悔しさも残った、でも最後は笑顔で後輩達に託した、次は必ず甲子園へ…。


帰り道の前に話していた二人は…。


「俺らにもこれからいろんな結末が待っているんだよな…」


「あれが…天智の野球なんだよ、どんな方法だろうと一点を取る、重い点数になるほど…あの犠牲フライだろうと何だろうと…あれがホームランでも結果は同じだからな…」


すると、グラウンドを見つめる先輩二人がいた、何を話しているのだろうか。


「元気出せ海堂、俺の怪我も大した事はないし、お前が打たれても誰も文句は言わない…終わったんだ…次目指せ」


「僕のミスなのは間違いないです、警戒心が薄れてました…まだまだですね僕は…」


肩をポンっとすると、安達は帰路に進んで行った、夕陽に明け暮れる海堂の姿はかっこ良くも見えるが、本人らしくない変わった姿でもあった。


「先輩?…お疲れ様です」


「…ふっあれが僕の実力だよ、こんなもんさ、いろんな意味で勉強になったかな?…」


「…俺には…立ち姿が凄かったですよ!急な登板にも冷静で、自分のスタイルを貫き通して、みんなを湧きだたせるマウンドさばきというか…俺には凄い刺激になりましたよ!」


「僕も正直驚いたんだ、準備はしていたけどあんな大事な場面で僕を使ってくれるなんてさ…その期待に応えたいっていう気持ちと、あの投手戦の中で打たれたらどうしよう、ミスしたらどうしようっていう不安で頭の中がいっぱいだった、その少しの不安があの結果に出てしまったと思うと…僕はもっと強くならないといけない…もっと技術だけでなく、精神的にも強く…」


「先輩は強いっすよ!そりゃー誰だってあんな場面、不安と緊張だらけですって!俺だったら…絶対無理っす…みんなが先輩を信じてたんすよ、やってくれるって、でも先輩も完璧人間ではないですし…そんなこともありますよ!…だから来年リベンジしましょ!俺も強くなりたいんで、先輩と一緒にまた頂点…目指したいです!…ほら隼人からも何か…」


「えっ……あの海堂さん…その…後輩の見本は、崩れてはならないと思います」


「隼人お前…うーん…」


「あはは…その通りだね…ちょっと休憩して、またいつも通りの海堂を見せないとね」


ようやく笑顔が戻った海堂、やはりこの姿がナンバーワンに相応しい、かっこいい。


「よーし…夕陽に向かって…」


「えっ!?ちょっと走るんじゃなくて投げるんすかー!?」


放物線を描く輝く白球、これはとても綺麗だ。


「先輩!無理しないで下さい!」


帰り道には再び、一歩を踏み出す大きな原動力となることをした。

「何をお願いしたんですか?」


「健康第一、慎重投球、学力向上、そして…恋愛成就」


「みっちりっすねー、隼人は?」


「俺も海堂さんと同じような感じだよ」


「俺は…明るく楽しく元気な未来が待っていますようにって!」


「アバウトー…まあらしいか…」


「僕も松野君の願い、凄い良いと思う」


「マジっすかー頑張れそうな気がするー」


未来はわからない、でもそう思うだけでも明るく見えてくるのは間違いない。

「あと一歩だったねー、でも凄い盛り上がってたし何より…野球部強いなーって思ったー!」


「まあなー…でもあの海堂先輩が打たれるって…天智ってすげーんだな」


「私的にはあの時の歓声にも驚いたよ…凄まじい人気っぷり」


「あの先輩、あんなに凄い人だったんだね、聞いた通りだった!」


「美愛は気付くの遅すぎなーの!知らないほうが珍しいんだから…来年はもっと凄いだろうなー」


(私…あんなとんでもない人に…あー!!あれは絶対社交辞令っていうのだよね!うんうん!)


首を振りながら足をバタバタさせている美愛に困惑の一同。


「海堂先輩、落ち込んでないといいけどねー…自分のせいで…って思ってるかもしれないし」


「俺なら絶対そう思うわ…ましてやあの大事な決勝でなんてさ…結構引きずる」


「あえて、美愛…会ったら慰めるしかないね」


「無理矢理私にさせるなんて、まあ会ったらだけどね…多分」

翌日の昼休み。


「龍悟ー、何処いくんだー?また一年のところかー?」


「今日はお昼を特等席で食べようかなって思ってね」


お弁当を持ち、海堂が向かった場所は…いつも心機一転の為に来る所、今日はおまけ付き。


「あれっ松野君、もう来てたのか、どうだい?本当はここまで来ては駄目なんだけどね」


「まあ見つからないっすよ!それにしても気持ちいいっすねー…日向ぼっこ気分」


「屋上自体もなかなか来ないけど、屋上の違う屋上、的な感じなんだよね、たまたま見つけちゃって…上手く来れる方法を教えといて良かったよ」


「確かに元気になりますね、不思議に少し黄昏れてしまうような気持ちになりますねー」


「松野君に元気をもらって、元気がもらえる場所で松野君と共に昼食、こんなに素晴らしいことはないね」


「そんな大袈裟っすよー!ここにいる先輩めっちゃかっこいいっすわ!俺も先輩になったら後輩に教えたいですよー!」


「…僕から未来に繋がったりしてね、それはそれで面白いかも」


「伝統にはなりますよきっと、先輩から亜星の強さが目立ったらしいですし…」


「元々も中堅校並みだったらしいけど、先輩方も凄かったよ、大岸監督になったのも大きかった」


「…先輩って何で亜星に入ろうって思ったんすか?」


「えっ?あー…あまり言ってないんだけど、松野君には教えよう…僕が亜星を選んだ理由、それは___」

「今日も綺麗なお弁当だこと、美愛の性格出てるよねー」


「半分はお母さんが作ってるから、私も頑張らないとなーって」


「そうだねー、ママ様には感謝、たまに面倒くさくて作らない時もあるらしいけど…」


「まあまあ、やっぱ私だけじゃなくてお姉ちゃんにも作ってるから大変だと思う」


「あー美愛のお姉さんも綺麗だよねー、めっちゃ高三とか大学生に見えるし」


「ホンット、家系の違いってやつ?しかもモデルってやっぱ凄い…初めて会った時の衝撃はもう…」


「えっモデルやってんのー!?てか何でふみか知ってんのー!?美愛ーうちにも言ってよー!」


「一応、ちょっと言った記憶が…」

「えっ…本当っすか…それが…理由?」


「そういうこと、だから下手すりゃ亜星ではなくても良かったということ」


「じゃあ…天智にいたという可能性も…」


「さあ…でも多分、天智には行かなかったかもね、まあそうして一年生は終わって、新入生が入学する前くらいかな…またここに来て、また元気を何とか出して、今に至る、その日以来かなー今日は」


「でも、応援してるんすね、今でも」


「もちろんだよ、僕もこうして頑張っている、でも時々思うんだ…今日という日まで亜星での学校生活はものすごく充実してる、だけど…もっと楽しかったのではないかって」


「先輩…無理してたんすね…何かすいません…」


「僕は今成りの楽しさで充分さ、まあ…強がっているらしいから、本当は僕も弱いんだなーって…たまにここに来て思って、またポジティブに明日を進もうとする」


「それを支えるのが俺ら後輩や先輩達の役目っすよ!亜星野球部の絆の強さはどこにも負けてないですし!」


「その通りだね…君には本当に救われてるよ、ありがとう」


「いえいえ!先輩は俺の師匠でもありますから!」


「一緒に頂点目指そう、また最高の姿を見せてあげたい」


熱く結ばれるものは、英輔が何か変化させようとしていることであって、それは間違いなく未来に見えてくる。


「あっと言う間にこんな時間、早く出ないとさすがに見つかるかもしれないね」


「えっちょっと先輩、俺まだ食べてますって!」


秘密の場所はいずれ大きなものになるだろう。

「おっ一年生どうだったー?」


「だから違うよ、外は今日も快晴だよ」


「まあそうですけど…何だ中庭にでも行ってたのか」


「下のじゃなくて、上ね…まあ今度中庭行こう」


ふと海堂は外を見てまた思った…。


(松野君…君にどう捉えたかな…あと、その先の大事なことは言えなかった…ごめんね、さすがに言えない…僕もつい最近気付き、事実を知った…仮に彼女は知っているのだろうか…複雑な模様が見える…)


(俺も…そういうことあるのかなー、ってかまず彼女出来ないと!…何か起きないかなー運命的な…)


「英輔、何ニヤニヤしてんだー?」


「えっ別に何でもねーよ!ただ…その、道の選択って大事だなーって思っただけだ!」

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