太陽
ああ。
ずっとずっと待ち続けてきた「彼女」がやっとこの世界に!
僕、ジョシュ・カークライト・ワイマールは積年の「占」の結果、恋焦がれた運命の恋人を向かえに城から程近い草原を通る街道で空を見上げていた。
広大な領土を有するこのワイマール王国では、「占」と呼ばれる占いで、大きな出来事を予測し、災難や不幸は避け、幸運を手に入れられる出来事には積極的に関わるようにすることで1000年以上もの平和な時代が築かれていた。
「占」の方法は様々で、的中率も人によって異なってはくるが、歴代王族は国内有数の「占」力を持っており、僕はその王族の第一王子としてこの国で現在父王に次ぐ「占」力を有している。
「占」力があったから王族となったのか、王族だから「占」力が高いのかは
よくわからないが、代々王は国内一の「占」力を有し、王子がそれに次ぐ「占」力を有していることが多いこの国で、僕の高い的中率を誇る「占」には小さな頃から一人の女神がずっと現れていた。
もちろん、自分の未来を全て自分で「占」できるわけではないので、複数の人に見てもらったりするが、僕の人生の転機は王が占っても、神官や占術家、大巨達、誰が占ってもほぼ一致していた。
僕の人生を左右する異世界からの「旅人」。
僕はこの日、この場所で、彼女を待ち、保護し、愛し愛されることでこの国を更なる繁栄に導かなければいけない。
異世界からの迷子である「旅人」を保護した人には幸運な人生が約束される。
王子である僕が保護する「旅人」は今まで以上に僕とこの国に幸福をもたらすだろう。
僕はもう既に君を愛しているし、あとはもう君が僕を愛するだけ。
目を閉じ、瞼の裏に浮かぶまだ見ぬ彼女を思う。
すらりと伸びた手足、華奢な足首に、折れそうに細い手首。少し猫のように釣りあがった凛とした目元。
茶色の落ち着いたワンピースに身を包んだ彼女はお揃いの茶色の帽子を少し斜めに黒髪の上に載せ、涼やかな声でこう尋ねるのだ。
「助けて頂きありがとうございます」
小さく頭を下げ、小首をかしげるようなそのしぐさが、大人っぽく見える外見に反してかわいらしい。不安そうに、でもそれを感じさせまいときゅっと結ばれたピンク色に色づいた薄い唇。
背の高さに反して小ぶりな耳、鼻、そして顔自体が、彼女の色白さと相まって儚げな印象をかもし出している。
それでも、実はその長い黒髪を乱して走ったり、飛んだり、以外とお転婆なところがあることも、少し、、、いや、かなりきついその性格も、物心付いた時から何度も何度も占った自らの「占」で僕はもう知っている。
そして、僕は何をされても、これから何があっても、「占」の結果がどう変わっていっても、何度も君に恋をして、君と共に一生を歩いて行くのだろう。
死が二人を別つその瞬間まで。
君を、「元の国」になど絶対に還しはしない。
黒い笑顔を顔に貼り付け、そう誓って空に燦然と輝く太陽に向けて両手を伸ばす。
運命の鐘が今燦然となり響く。
ああ、僕の太陽が降って来る。
本当に太陽から落ちてきたかのような僕の「運命の女神」。
さあ、二人で恋をしようか。
君は僕の太陽。
完全に妄想王子ですいません。