把握
男から離れる方向へと優雅に立ち去ろうと、くるりと踵を返しかけた瞬間、
先ほどは草しか見えなかった全方位から、草を掻き分けて大勢の男性達が走り寄ってきた。
「殿下!!」
「大丈夫でございますか!!」
皆一様に白い大きな布を頭から被り、顔以外の全てを覆っている。
一人、二人、三、四、五。
更に視界の端から増えていく人に数えるのを諦める。
五と蛙のような王子、対、私一人でも厳しい状況になるのに、それ以上になってはさすがに逃げることさえ難しい。
白い布と黒い布との違いはあるが、今まで気配すら感じさせなかったことを考えると、この人達はこの蛙王子の忍びか護衛のようなものなのだろうか。
そうなってくると、ますます、大勢の男と思しき人達と私一人では動くことですら危険だ。
無様に突っ伏している男に背を向けるのは諦め、それでも心ばかりの抵抗として、一歩、二歩と後ずさり、距離を取ろうとする。
「ああ。その気高い精神も素晴らしいね」
ふと足元を見ると、蛙のように伸びていたはずの男があっという間に復活して私の前に跪き、自分を見上げていた。
そして、こともあろうに、、、。
そのまま、正座をするようにうずくまると私の足の爪先へ口付けたのだ!!!!
婦女子の!
衣服の足元に!!
うずくまった上に!!
靴の上からとはいえ、初対面の相手に口付けるなど!!
「言語道断!男の風上にも置けぬ変態めっ!!!!」
思わず、良家子女にあるまじきことながら。
男を蹴り倒してしまいました。
反省。
深く、深く反省しながら。
それでも冷静な頭のどこかで、こう感じていたのです。
ああ、自称ではなく本当に王子様なのですね。
でも非常に残念な変態王子なのですね。と。