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変態王子に愛されちゃいました? ふぁんたじぃ版  作者: 藍さくら
貴方はどちら様でしょうか。そうですか、不審者様でしたか。
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接触

全年齢版のパラレル版書いてみました。

落ちるっ!!!


突然の浮遊感に、内心は慌てながらも、それでも衝撃にそなえて身を硬くする。


なぜこの状況になっているのかはさっぱり分からないものの、落ちている以上は仕方がないのです。


以前猫を助けにちょっとした木に登り、足を滑らせた時にのケガと痛みを思い出しながら、

今度は前回よりも軽症であるようにと祈る。


目をつぶり、身を硬くする私を、突然、柔らかく温かい何かがふわりと受けとめる。


「見つけた。捕まえた。僕のファム・ファタル」


伸びてきた腕がわが身を抱え込み、、、


猛烈な勢いで頬ずりをされる。


・。

・・。

・・・。


ワタクシナニヲサレテイルノデショウカ。


一瞬。

世界が時間を止めたかと思いました。


何をされたのかが把握できず、

判断が遅れましたが、、、これは一大事。


わが身の。


ぴょんと俊敏に腕から飛び降り、

愛用の薙刀、はないので、、、、。


仕方なく右手を前に差し出し相手の顔の横で静止させる。


もちろん。

少しでも相手が動いたならば、


「この不埒者」


と盛大に頬を張る気は満々です。


「助けて頂きありがとうございます」

まずは、もちろん、お礼です。

何はともあれ、お礼は大事ですから。


外面淑女の仮面でにっこりと微笑んでみせます。

昭和元年生まれの良家子女たるもの、外面淑女は生まれた時から叩き込まれた、いわばお家芸。


母上様の

「媚びない、へつらわない、でも慈愛も忘れない」

という厳しい微笑み練習が脳裏をよぎります。

脳内での優しくも凛々しい母上のお声に耳を傾けながらも、

もちろん、状況把握と情報収集、現状判断は忘れません。


目の前には、どちらかというと女学校内でも背が高かった私より、さらに頭一つ分高い綺羅綺羅しい男が一人。

その他にはちらっと視線だけ動かした視界全てがだだ広い草原。目に痛いほど蒼く突き抜ける空。

家族で戦争が始まる前に旅行に出かけた那須や軽井沢の草原地を彷彿とさせます。

足元には整備されているような煉瓦造りの街道。どうやらある程度の文化水準を持った場所にいる模様。


そよそよっと涼やかで優しい風が吹き抜けていきます。

私達が立っている街道に沿った腰程の高さがある見たことのない草が風に頭を垂れ

さわっさわっと波立っていきます。


危険物、なし。

草の陰にも何もない様子を見て取りとりあえず眼前の男には気づかれないよう、そっと一息つきます。


何故このような場所に突然自分がいるのかは謎ですが、

とりあえず身の危険は目の前の男性以外にはなさそうです。


頭の上の方からゆっくりと気づかれないように視線を足元までずらしていきます。

母上が以前読んでくれた外国の絵本に出てくる王子様のような金髪、碧眼。

少し襟足よりも長い髪は緩やかに波打ち、顔の周りを神神しく彩っています。

翡翠のような美しい緑の瞳は顔から零れ落ちそうなほど大きく、男子の癖に何故か少し潤みがかっております。

鼻筋がしっかりはっきりと通った顔。

日本人よりも二周りは大きそうなふっくらとした唇。

私も移動のため、本日は洋装でしたが、日本で人々が着ている洋装よりも金糸・銀糸などが使われ華やかな上着と、装飾はないものの、上質そうなズボンを履いている姿を見ても、外国の方、と認識して良さそうです。


汽車に乗ろうとした私が、そもそも何故人とぶつかった瞬間に、草原へと落下したのかは目の前の男性をじっくりと検分したところで未だ不可解な謎のままですが、その謎を解くためにも、また、早急に駅に戻るためにも、もっと情報が必要です。


果たしてお礼も含めて、言葉が通じているのかは分かりかねますが、情報を得るためにはこちらから話掛けてみる以外手法がありません。

「ところで、こちらはどこになるのでしょうか?そして貴方様はどなた様でしょうか?」


「ファム・ファタル」

女学校時代の友人等が見かけたら、悲鳴を上げそうな煌びやかな笑みで、にっこりと微笑み返すと男は

私の方に、多分、空から落ちてきた私を受け止めてくれたであろう両手を差し出したまま熱い眼差しを向けてきています。


私の問いかけに対して、意味が分からない文言しか返って来ないということは、まず言語は異なる地域で

会話は難しいのかもしれません。


それにしても、何故、この御方は私が横に飛び降りたにも関わらず、手を差し出したままこちらを向いたのでしょうか。

静止した右手は動かさないまま、左手を口元に当てて推理をしてみます。


運動神経は悪くないようです。

私を受け止めるなど、機敏に反応していますからね。

やはり言語が違うのでしょうか。

それにしても手を下ろすのを忘れていますからね。

もしかしたら頭が悪いのか頭の回転が鈍いのかもしれません。


再度、別の文言を使って、ゆっくりと問いかけてみることにします。


「始めまして、でしょうか?お名前を教えてくださらない?」

「ああ、麗しいその声、美しい姿、華奢な手、全てが僕の「占」の通りだ。

始めまして。女神のような僕の運命の人。運命の「旅人」よ。

出会う前から恋をしていたが、もう君以外は誰も見えないファム・ファタル。

僕の名前はジョシュ・カークライト・ワイマール。

このワイマール王国の第一王子にして君を待ち焦がれていた運命の恋人だよ。」

男は、よくも男子の癖に長々と!と思うほど突然べらべらと話し出した。

そして、さっと上げていた手を下ろしたかと思うと、降ろす右手で私が静止するために出していた右手を掴み、手の甲を空に向けさせると、腰をかがめ、唇を近づけてきた。


「この無礼者」


危うく唇が手の甲に触れる寸前のところで引き抜き、そのまましなりを効かせしっかりと相手の左頬へと叩き込む。


ぱしーーーーーーーーーーーん。


殴打一発。とりあえず男が勢いで、左に吹っ飛び、踏みつけられた蛙のようにぺしゃりと地面に突っ伏した間に、聞こえてきた情報を目まぐるしく整理する。


この男は危険。


もっと距離をとるべし。


ここはワイマール王国。

聞いたこともない国名だ。

この危険人物は自称第一王子。


もしかしたら、壮大な妄想に捕り付かれている可愛そうな人なのかもしれない。

それでも、ここはもっと距離をとった方が安全か。


戯言は全て右から左へ流すとして。

聞いたことがない文言は国名と名前以外に「せん」、「ふぁむ・ふぁたる」。

この二つは忘れないように覚えておいて、次に会う人にも確認をとらなくては。


よし。以上のことから結論を導き出すとすると、、、。


今すぐ男と距離をとり、ここから離れて別の会話が成立する相手を探すべきね。


両版読める方はパラレル度を比べていただければ。ラブコメ度増量で途中からパラレルします。

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