1
○月○日(晴れ)今日は暑かった。
初めまして私ハイネと言います。リフレアーノ島北部サガル帝国帝都ゼルードに住む15歳です。
小さい頃に母を亡くし孤児院で10年間過ごし、神ぷ…げふん、マザーですマザー(ガクブルガクブル)、その…ちょっと変わったマザーやお手伝いの方々には色々な事を教わりました、文字の読み書きや食事の下拵え洗濯の仕方、男の子は馬や動物の世話に女の子は裁縫等、何処でも働ける様に困らない様にしつ…いえ教育され…してもらいました。なんとか就職出来て今はお城で下働きの仕事をつい1時間前までしていたのですが…なんと出世しました…おかしいです、ありえません…新しい仕事は乳母様補佐と言う名の遊び相手です。
事の起こりは私がお城に勤めて4ヶ月たった今日の朝の事でした。暑かったんですが外でいつもの様に同じ下働きの人達とおしゃべりしながら玉ねぎやじゃがいも等の皮むきをしていると何処からともなく現われた1人の少年が発端です。勘のいい人ならもうおわかりでしょう、ジェイク・ベネディクト・サガル皇太子様(7歳)でした。(島では皇族や王族それに準ずる人にはミドルネームが付きます。)しかし私達にはわかりませんでした…だって庶民の服着て泥だらけだったし名前もジェイって名乗ったんですよ(泣)庶民には皇太子様の名前に肖かってジェイクやジェイやジェット等付ける人達がいるんです、孤児院でも5人はいました…皇族なんて、お祭りの際に遠くから見れればいい方です。肖像画?売ってますけど…肖像画を買うくらいなら食料品買ってますよ!
その結果、私達と言うか私は孤児院時代の癖で(下の子の世話は上の仕事の1つです)少年いえ皇太子様を子供扱いした挙句に井戸まで連れて行き、服をはぎ取りました。…幸い服は日向に干せばすぐに乾くぐらいの日差しでしたから…ついでに皇太子様も丸洗いし、持って来たシーツに包んどきました。
その間、皇太子様も物珍しかったのでしょうか?言いなりでした、そりゃ皇太子様の立場ですから周りもあんまり子供扱いとかしないよね?
まあその後、服が乾くまでの間に野菜の皮むきを教えたりおしゃべり(主に噂話)したりして、時間を潰し服が乾くまで私達と過ごした皇太子様は夕方になると帰って行きました。
その日の夜、夕食を食べ終え下働き専用の宿舎で明日の支度をしていると下働きをまとめているクレアさんに呼ばれ、あれよあれよと言う間に(抵抗しましたが)乳母様補佐に鞍替えし(荷物を纏めても私物は鞄1つで足りますから移動は楽でした)、乳母様のマーサ様(伯爵婦人みたいです)より指導(と言うなの愚痴)を聞きつつ皇太子様の部屋の隣りの小部屋に落ち着きました。
部屋は元々は夜勤の侍女の部屋だったのでしょうか?簡易ベッド(下に私物を収納できるタイプ)に手紙が書ける台と椅子しかありませんが初1人部屋です(やったね!気分は嬉しくて小躍りしそうです)
さっそく私物をベッド下の収納に入れようと思い引き出しを引いて中を覗いたら…カエルがいましたしかも3匹…誰かの嫌がらせだと思うのですが、心当りがありません。3匹って事は複数??まあ、どっちにしろカエルは怖くありません。むしろ可愛らしい嫌がらせです。孤児院ではいろいろな事がありましたから(遠い目)
とりあえず、カエル達には窓より退場して頂きましょう。窓の外はテラスに続いていますが、出入りは出来ない窓(明かり取り用)なので窓の隙間より投げてもカエル達は大丈夫でしょう。……窓より放しました、聞き覚えのある声の悲鳴も聞こえました…どうやら犯人は窓の外に潜んでこちらを伺ってた皇太子様の様です。イラッとしました、無理矢理移動した挙句に幼稚な嫌がらせ…しかし相手は皇太子様です、どうやって仕返ししていいかわかりません。こうなれば、事細かに皇太子様観察日記を付けましょう。マザーがかつて言ってました、「観察日記はいつか役に立つ」と。どんな風に役に立つかは今はわかりませんがマザーが言う事には間違いありません。しかも実証済みみたいです(観察対象が誰かは判りませんが…)なので、今日の出来事からこれ(日記)を付けたいと思います。