生命の秘宝
ジャラ・・・
マリィがアクセサリーを拾い上げる
「これがOパーツ
様々な形をしているけど、獣化型は獣の牙や爪などをモチーフにしたものがみたいね」
「それはどうするんだ?」
俺が聞くとマリィはそれを空へと掲げた
ピィンッ!
それは一瞬光るとマリィの胸に吸い込まれていった
「私の体を通して主に送ったわ
これで残り99個・・・頑張りましょ」
「・・・先は長そうだな」
しかし、さっきのは何なんだったんだ?
炎は炎でも・・・何か別のものに感じた気がする・・・
「・・・」
その夜・・・
「・・・」
そこは廃墟だった
だが、そこに座している男の存在がそこを城のように感じさせる
彼を一言で言い表すなら王
それが最も妥当な表現だといえる
「まだ、集まらんか・・・」
彼の正面にはもう1人男がいた
それは王という風格とは別の雰囲気をかもし出している
「緊急な呼び出しだった為、もうしばらくかかるでしょう」
それはまさに騎士と呼ぶに相応しい男だった
「・・・いえ、流石というべきですね」
そう口にしたあと頭をふるって顔を上げるとそこには3つの姿があった
「遅刻ですよ、ブラックラビット、ブルーハート、ウィングロッド」
その言葉に対し、三者三様の言葉が返ってきた
「あのさ・・・一番近くに居る君に言われたくないんだけど」
「全くだ・・・
ラビやロッドのように移動能力がない私にしてみたらこういうのはいい迷惑だ」
「俺も今日は空の散歩としゃれ込もうとしていたのに」
「やれやれ・・・口が減らないことだ」
「全員、集まったな
集まってもらったのは他でもない
今日、2人の同種が狩られた
1人は無名の現象型、もう1人は獣化型で頭角を現し始めていたウルフだ」
「なんだ、まだ転界を使わないと力を使えないような奴等じゃない」
「共食い?」
王の発言に食いついたのはブラックラビットとブルーハートだった
「・・・やられたのが小物でよかったと思うなかれ
復活祭は近い・・・ここで同種が減るのは後が面倒だ
故に自分の管轄の同種の扱いに注意しろ
・・・以上だ、持ち場にもどれ」
3人の姿が音なく消えた
「ナイト、お前は奴等の持ち場を回り必要があれば指揮を執れ」
「御意」
騎士もまた頭を下げた後に姿を消した
「・・・」
王はしばらく無言だった
しかし、不意に・・・
「・・・ジョーカー」
「・・・ここに」
姿はなかった
ただ、声だけがした
「例の件・・・どうなっている」
「順調の一言で」
「この一件、お前に任せる」
「御意」
その気配も消え、王1人になった
ギュッ・・・
王が左胸を抑えた
そこには消えることのない傷が深く残されていた
スゥ・・・
俺は結局自分の部屋に戻ってきた
「家族は居ないの?」
「・・・ああ、誰もな」
ベットに腰を下ろした
何件も家具屋を巡って見つけたお気に入りのベット・・・だった
それも触ることは出来ても感触はない
「全部集めたら元に戻れるよ」
マリィの小さい両手が俺の手に触れていた
「少し・・・寝ていいか?
なんかあったら起こしてくれ」
俺はそう言って目を閉じた
俺はその日、夢を見た
そこには血だらけのスーツ姿の男の後姿があった
男はこちらを振り返ることなく、前へと歩き出した
その眼目の前には武装した男達が待ち構えていた
男の手にも刃を血に染めた日本刀が握られている
ふと俺が後ろを振り返ると純白のドレスを着た少女が涙を流して叫んでいた
それでも男は歩みを止めず、男達の前に立った
彼を取り囲んだ数は50
その中で一際目立つ白いタキシードを着た男がこちらに向かって大声を上げていた
それでも彼は動じることなく、胸元からタバコを取り出し火をつけて紫煙を口から吐いた
随分久しぶりに吸ったのだろうか
彼に一握りの余裕が生まれているようだった
そのタバコを投げ捨てると彼は一陣の疾風と化す
30mもの距離をすばやく詰め、刀を振り抜く
そこからはまさに剣の鬼だった
防弾ベストを切り裂き、銃身を断ち、首を落とす
銃弾の嵐を舞うようにかわし歩を伸ばす
無論、彼とて無傷という訳ではない
片足は銃弾が貫通し、相手の最期の意地による負傷も数多くある
されど、全てはあの小さな願いのため
彼が唯一叶えることの出来た願いのため
彼は鬼と化した
そして、ついに・・・白いタキシードの男1人となった
腰を抜かし、動けない相手は面子を捨て命乞いした
それでも彼は刀を振り下ろした
静まり返った場から踵を返して彼はそこへと戻った
そこには笑顔があるはずだった
彼が唯一安らぎを感じた
彼が人だと思い出させた
・・・・・・笑顔があるはずだった
扉を開けたそこには白いドレスの胸元に赤い花が咲いていた
刀を捨てて抱きしめると鼓動はなく、ただただ冷たくなっていくだけのものになっていた
そして、自分もまた同じようなものになりつつあることを悟った
その時、治療すればまだ助かったかもしれない
しかし、彼は彼女だったものを抱きしめたまま壁にもたれ掛かった
彼は願いを叶えられなかった無念を残し、その生涯を閉じた