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第二十三話

 

 かつてエルトリィンの花が咲き乱れた花壇の近くに木製のテーブルが置かれている。それは地下の物置に放置されていたテーブルであり、まだまだ使えそうだと判断したトールによって運び出された。


 人間用のテーブルにしては大きかったが、さすがにオーガが使うとなると高さが足りなかった。そこで地面の土を盛り上げてどうにか調整し、椅子は丸太を転がすことにした。


 こうして出来上がった、少しばかり不格好なテーブルと椅子のセットをトールは気に入っていた。


 陽当たりも良く、心地よい風が吹き抜ける場所でハーブティーを飲みながら花々を愛でる。これまでトールはこの場所で贅沢な一時をクロと楽しんできた。



 それを妖精も同じように楽しんでくれたようだ。トールが焼けたサツマイモを大きな木皿で運ぶと、二人の妖精はテーブルの端に並んで座り、花壇の花々を見つめていた。その背中の美しい翅が、どこか楽し気に揺れている。


 トールが木皿を置くと同時に二人は振り返り、そこに積まれたサツマイモに瞠目する様子が見て取れた。驚く二人を横目に、一緒に持ってきた木箱をひっくり返してからテーブルにそっと置けば、それは即席の椅子となってくれる。テーブルの上とはいえ、そのまま座らせて食事をさせるのはあまりに失礼だろう。


「妖精の口に合うかは分かりませんが、どうぞ召し上がってください」

「ありがとうございます。頂きますわ」


 シアが礼の言葉を述べると、アナも戸惑いながら頭を下げた。どうやら隠れずに済む程度には慣れてくれたようだ。二人が並んで即席の椅子に腰掛ければ、目測ながら丁度いい大きさじゃないか、と内心で自賛しながらトールも丸太に腰を下ろした。


 なんとも奇妙な食事会は、こうして始まった。そして、それはトールにとって驚きに満ち溢れるものとなる。


******


 妖精が食べやすいように、トールは比較的小さなサツマイモを幾つか選んでいた。それでも妖精から見ればかなり大きいだろう。さらに食べやすくするため、サツマイモを切ろうとしたときだった。


 初めて見る焼き芋を興味深そうに眺めていたシアが、ゆっくりと手を振ったのだ。何をしているのだろうと思う間もなく、ふわりとサツマイモが宙に浮かんだ。


 シアの前まで移動したサツマイモが僅かに歪んだかと思えば、誰かが手を添えたかのように真ん中から二つに割れた。瞬間、黄みがかった果肉が湯気を上げながら甘い香りを広げていく。


 唖然とするトールをよそに、シアはサツマイモを早速とばかりに食べ始めた。サツマイモの果肉が妖精の口でも食べやすい大きさに割れていく様子に、トールは言葉が出てこなかった


「香りに違わず、とっても甘くて美味しいわ」

「本当に。こんなに甘いなんて思わなかった」


 見れば、アナも同じようにサツマイモを食べていた。二人の妖精はサツマイモを気に入ったようだ。小柄な体からは想像できないほど、次々に口に運んでいる。


「あ、ごめんなさい。つい食べるのに夢中になってしまいました」


 思わずその姿をじっと見つめてしまった。そんなトールの視線に気づいたのか、シアが恥ずかしそうに頬を赤らめた。


「い、いえ。ええっと、お二人は魔法のようなものが使えるので?」


 この世界には魔法が存在していることは知っているが、当然ながら今まで見たことはない。不躾な態度を申し訳なく思いつつも、訊かずにはいられなかった。


「魔法の一種ではあります。エルフや人間たちが扱う魔法とは少しばかり異なりますが」

「なんと。これが本物の魔法というものですか」


 初めて見る魔法にトールは好奇心が湧き上がるのを感じた。それに彼女の口からは更に興味深い話も飛び出した。妖精が扱う魔法とエルフや人間が扱う魔法には違いがあるらしい。


 どのような違いがあるのだろう。それは誰でも使えるのか、それに規模はどれほどのものなのだろうか。次から次へと疑問が浮かんでくる。


 とはいえ、今は食事――サツマイモしかないが――の時間である。あれこれと質問をぶつけるのは自重するべきだろう。


「トールさんは魔法に興味がおありのようですね」


 しかし、シアには隠しきれなかったらしい。見事に指摘されてしまった。


「ええ。文献などで魔法があるというのは知っていたのですが、これまで見たこともなく……」


 ならば、とトールは隠すことなく本心を語った。正直な気持ちを伝えながらも照れ臭く笑うオーガの姿に、シアもはにかんでくれた。


「それなら、魔法についてお教えしましょうか?」

「えっ、よろしいので?」

「私程度の知識でよいのであれば、喜んで」


 願ってもいない言葉にトールは勢い良く首を縦に振った。


「そうだ。いい機会だからアナも――」

「クロちゃん! わたし、エルトリィンの花をもっと近くで見たいな!」


 今まで黙々とサツマイモを食べていたアナが突然声を張り上げ、同じようにのんびりとサツマイモを食べていたクロの頭に飛び乗った。


『いいよ。一緒に見よう!』

「というわけで、わたしはクロちゃんとあっち行っているから!」

「あ、ちょっとアナ!」


 シアの呼びかけも空しく、アナはクロと一緒に花壇へと向かってしまった。その後ろを二つのサツマイモが追従する光景は、何とも言えない可笑しさがあった。


「もう、勉強の話をするとすぐ逃げるんだから」


 怒ったような口調であったが、その表情は柔和なものであった。このやりとりはいつもの事なのか、仕方がない、と笑っているようにも見えた。


「ごめんなさい、トールさん。魔法の話でしたね」


 こほんと咳払いをしてから、シアは魔法について語りだした。



 彼女によれば、この世界には「魔素」なるものが遍在しているという。魔素を取り込み、体内で魔力として練り上げ、放出することで様々な効果を具現化する。まさしく魔法と呼ぶにふさわしい、驚くべき現象である。


 しかしながら魔法を扱う技術には個人差があり、卓越した魔力運用で高度な魔法を駆使する者もいれば、体内に魔素を取り込むことすらできない者もいるという話だ。それは人間だけでなく、魔法との関係が深いエルフですら少なくない割合で素養がない者がいる、とも教えてくれた。


 結局のところ、人間だろうがエルフだろうが魔法を使うには「才能」が必要である、ということだった。



「誰もが気軽に使える、というわけではないのか」


 サツマイモを口に放り込みながら、トールは唸るように言葉を発した。


「そうなりますね。でも、魔具ならば少し話が変わります」

「マグ……?」


 また聞いたことがない、そして興味が引かれる単語が飛び出してきた。



 魔具。あるいは魔導具と呼ばれるそれは、その名の通り「魔法の力を刻み込んだ道具」のことだった。特殊な方法で魔法効果を封じ込め、使用者は自身の魔力を伝達させるだけで発現させることが可能だという。


 ランプ代わりに光る石といった単純な物から、巨大な火球を降り注がせるという驚くべき効果を持つ杖など、魔具の種類は多岐にわたるらしい。


 当然ながら規模や威力が大きいものほど必要な魔力が多く、また操作も難しい。それでも単独で魔法を発現させることに比べれば容易であり、古今多くの人々が魔具を使用してきた。



「ということは、火をおこすのも簡単ということですね」


 シアの話を聞きながら、トールは手早く火をおこしていた。錐揉み式の発火法は手慣れたものだが、魔具があればもっと早く火をおこせるのだろう。いつかは使ってみたいものである。


「ええ。でも、トールさんの手際も見事ですよ」


 オーガが火をおこしている光景を信じられないように、それでいてどこか楽しそうに眺めながらシアが褒めてくれた。


「そう言ってもらえるのは嬉しいものです」


 予め組んでおいた即席の竈に鍋を置きながら、褒められた嬉しさにトールは顔を綻ばせた。凶悪な顔が僅かに緩んだ程度であったが、その変化にシアも気付いたのかにこりと微笑んだ。


 鍋の中の水が沸くまで二人は無言であったが、その沈黙はどこか心地よかった。


 水が沸騰したのを確認してから、トールは乾燥させておいたエルトリィンの花を投入する。途端に甘い香りが舞い上がり、湯の色がはちみつ色に変わっていく。もっと美味しくハーブティーを淹れる方法があるのだろうが、あいにくと手元にある道具ではこれが精一杯である。



「少しばかり不格好ですが、エルトリィンのハーブティーです。美味しいですよ」


 淹れ方も我流なれば無作法もいいところだ。さほど大きくはないとはいえ、鍋にハーブティーというのは間違いなく合っていない。


「カップも……って、これじゃ大き過ぎましたね」


 倉庫には人間用のカップも幾つか転がっていた。オーガであるトールや狼であるクロには小さいため、今まで使っていなかった。良い機会だと引っ張り出してみたが、妖精であるシアには逆に大きかった。


「とんだ失礼を。何か代わりの物を……」

「お待ちください」


 慌てて席を立とうとしたトールを止めたのはシアであった。怒るでも呆れるでもなく、柔らかい笑みを浮かべたまま言葉を重ねた。


「先ほど、妖精の魔法はエルフ達とは違う、と言いましたね。それをお見せしましょう」


 シアは近くに置いてあった丸太に視線をやった。後で薪にしようと転がしておいたもので、巨樹が乱立する最果ての森ではさほど大きな木ではないが、それでも幹は大人の人間が手を広げても届かない程度には太い。


「私たちの魔法は魔素を体内に取り込む必要はありません。魔素と同じように遍在する精霊たちにお願いするのです」


 木の一部を貰います、と言ってからシアは浮かび上がった。丸太の近くまで飛んだかと思えば、彼女の周囲が淡い光を帯びた。


 その光が丸太の切断面に向かった次の瞬間、突然木の一部が抉り取られた。その光景に目を見開いたトールをよそに、光に包まれた木材には驚くべき変化が起こっていた。


 削られ、歪み、磨かれ、瞬く間にティーカップとして形作られていったのだ。ソーサーを含んだ、木製のティーカップセットが二組。妖精が使用するためにいくらか小さいとはいえ、完成するまで長い時間は掛からなかった。


「トールさんの分も用意しますね。どうせならティーポットも一緒に作りましょうか?」

「あ、ああ。ぜひ、お願いしたい」


 あまりの出来事に呆然としていたトールだが、シアの提案には頷くことができた。地下倉庫にあったティーポットは一部が破損しており、残念ながら使用できない状態だった。新しいものを作ってくれるというのなら、否という選択肢はない。


 妖精用のティーカップセットが二組に、オーガ用の大きなセットが一組。トールでも使いやすいティーポット。それにクロが飲みやすいような口が広く深い大皿まで、シアは事も無げに作り上げた。



 早速、トールはシアが作ってくれたティーポットを使ってみることにした。鍋からポットに移してから、シアと自分用のカップにハーブティーを注いだ。壊れているポッドよりも大きく、使いやすいそれをトールはすぐに気に入った。


「良い香り。それにとても美味しいわ」


 ハーブティーを口に運び、ほっとした表情を浮かべるシアを見ているとトールも嬉しくなる。咲く前も、咲いた後も色々あったが、エルトリィンの花はトールの苦労が実った結果なのだ。それを楽しんでくれる人がいるというのは何とも嬉しいものだった。


「ああ、何度飲んでも美味い。さすがは幻の花といったところだな」

「とても贅沢な一時よね。世界の片隅で極上の茶会が開かれているなんて、誰も思わないでしょう」


 示し合わせたわけでもなく、気が付けば互いに砕けた口調になっていた。自然体で会話できるほうが気が楽だというのはトールだけでなく、シアも同じようだった。


「あの子たちも起きてたら楽しめたのに」

「あれだけ気持ちよさそうに寝ていると、起こすのも悪い気がするからな。仕方がないさ」


 自然と向いた視線の先には、丸まって寝ているクロと、その長い体毛に埋まるように眠っているアナの姿があった。二人の分の食器を使うのはまた今度になりそうだ。


「それにしても、先ほどのは驚かされた。あれが君たち妖精の魔法なのか」

「厳密には魔法とは異なるけれど、魔素に影響を受けるという意味では魔法と言えるでしょう」

「精霊……と呼んでいたか。それらも魔素と関係が?」

「ええ。精霊たちは魔素が豊富な場所を好むの」


 あらゆる場所に遍在する魔素も、土地によって濃淡がある。魔素が少ない場所は精霊も少なくなるため、妖精たちの魔法も影響を受けてしまうという。


「ただ、精霊が多ければ良い、というものでもないわ。妖精と精霊には相性が存在するから」

「相性? 属性みたいなもの、かな?」


 トールは子供のころに遊んだファンタジー世界を舞台にしたゲームを思い出した。ゲーム内で使える魔法には属性が設定されており、有利不利が存在していた。


「そのようなものね。私は植物と関係が深い妖精だから、木々や草花の精霊たちと相性が良いの」

「なるほど……ん?」


 シアの纏う緑の衣服に目を向けれてみれば、確かに植物との関係が深いように見えてくる。言われるまで特に思いもしなかったのに、なんとも単純なものだ。と、改めてシアを見やった時、トールはふと彼女の服の色が変わっていることに気付いた。


 出会った時は深く濃い緑をしていたのに、今は鮮やかな緑になっている。いつ変化したのか思い出せそうもない。そのことを訊いてみようかとも思ったが、存在そのものが不思議な妖精だ。そういうものだろうと考えを変えた。


「でも、妖精にとって一番大事なのは魔素との相性」


 それ以上にトールが問題としなかったのは、シアの表情がこれまでになく真剣なものになったからだった。


「妖精は魔素によって生きていることはご存知かしら?」

「いや、初耳だ」


 続けてシアの口から語られたのは、妖精の生態でもあった。


 妖精が生きていく上で必要なのは魔素であるという。魔素とは妖精にとって命の源であり、それを体内に取り込むことで生命を維持している。極端な話、妖精は魔素さえあれば飲食すら必要としない。


 人間やエルフは生存に魔素を必要とせず、魔法に必要となる。一方の妖精は魔法に魔素を必要とせず、生存に必要となる。異世界には異世界の、生きていくための掟があるようだ。


「トールさんに会い来たのは、それも関係しているの」

「そういえば、エルトリィンの花がどうこうと言っていたような……」


 トールに礼を言うために来た、と会った時に言っていた。それにエルトリィンの花が関係しているとも。トール自身には心当たりが全くなく、思わず首を傾げてしまった。


「私とアナは、元々別の土地に住んでいた妖精でね。ここに来たのはそれほど前ではないわ」

「なんと……」


 てっきり最果ての森に昔から住んでいる妖精だとばかり思っていた。予想外の事実に驚きを隠せないトールに笑いかけてから、シアは言葉を続けた。


「魔素というのは土地や環境で性質が変わるの。でも、此処のものは気まぐれというか何というか。とにかく特殊で、上手く馴染めなかった」


 彼女が言うには、この土地の魔素は少しばかり変わっているらしい。普段ならすんなりと体内に取り込めるはずなのに、なかなか適応できなかったという。


 魔素自体は豊富過ぎるほどで、精霊たちも活発に動いている。森の中なので身を隠す場所に困ることもない。妖精にとって生きていくのに良い条件が揃っているのに、シアとアナは徐々に疲弊していった。


 幸いにも「精霊の樹」に集う魔素は比較的取り込みやすく、辛うじて生き永らえた。とはいえ、それも一時凌ぎに過ぎない。既に別の土地へ移動する力は無く、このまま土地に馴染めなければ死を待つのみであった。


 焦燥感と絶望感に支配されつつあった時。驚くべきことに、オーガがエルトリィンの花を咲かせることに成功した。


「エルトリィンとは古いエルフの言葉で『妖精』という意味があるの。その名の通り、妖精と深い関係にあるわ」


 妖精たちにとって、エルトリィンの花に含まれる魔素はこれ以上ないほど相性が良い。体内に取り込んだエルトリィンの魔素により、シアとアナは生きる力を取り戻すことが出来た。


「それに、トールさんは精霊の樹にエルトリィンの花を植えてくれた」

「確かにあの花を移したが、何か関係があるのか?」

「私とアナは、あの大樹に住まわせてもらっているの。エルトリィンの花があれほど近くで咲き誇っていれば、土地との調和は難しくないわ」


 妖精に多大な影響を及ぼす存在が近くにあるのだ。その後押しにより、難儀していた土地への適応を見事果たすことができたという


「精霊の樹に移植した花が、そんなことに……」


 あの時は他に手段が思い浮かばず、苦肉の策としてエルトリィンの花を移植したが、思わぬ所で妖精たちの命を救っていたようだ。


「ええ。だから」


 シアは立ち上がると、ゆっくりとトールに歩み寄った。両手を胸の前で重ね、祈りを捧げるように頭を下げた。


「私たちの命を救ってくださり、本当にありがとうございます」


 それを言うためにシアはここまで来たのだろう。それもオーガの目の前で感謝の言葉を紡ぎ、一心に頭を下げている。


「本来ならアナも一緒に礼を言うべきなのは承知しています。ですが、今は私だけの無礼をお許しください」


 間違いなく恐怖はあっただろうし、ある種の覚悟もしていたかもしれない。だからこそ、それでも来てくれた彼女の言葉には一切の嘘偽りがないと信じることができた。


 そして、この事態を前に焦りを浮かべたのは他ならぬトールであった。


「どうか、頭を上げてくれないか。私は君に感謝されるようなことはしていないんだ」


 エルトリィンの花を咲かせたのはただの好奇心からであり、精霊の樹に花を移植したのはあの一件が自分の手に負えなくなったからだ。特に後者に関しては情けないことこの上ない。結果的に妖精を救えたが、胸を張ることなど出来そうにない。


「それよりも、私は二人と出会えた幸運に感謝したいと思う」


 何かしらの違いがあれば、その姿を見ることもなかっただろうに、こうしてこんな深い森の中で出会えたのだ。奇跡的ですらある、と大げさながらもトールは考えていた。


「よければ、他にも話を聞かせてくれないか。恥ずかしながら、私はこの世界をほとんど知らないんだ」


 短い時間の茶会ではあるが、シアの話は刺激的で興味深く、とても面白いものだった。魔法のことはもちろん、人間やエルフの話、それに外の世界のことをもっと聞いてみたい。


 未知なる世界についての知識を得る機会が乏しいトールにとっては、こうして色々な話を聞かせてくれる妖精と出会えた事が何よりも嬉しかった。


「……本当に、不思議なオーガさんね」


 その言葉はシアにとって予想外だったらしい。目を丸くしていたが、それも束の間。ふんわりと花開くように微笑んでくれた。



 茶会は続き、穏やかな空気の中でオーガと妖精は会話を重ねていった。二人の声で起きたクロとアナが加われば、新しい話題が生まれ、そして一層賑やかになっていく。



 世界の片隅で開かれた、奇妙で愉快なお茶会はまだまだ終わりそうになかった。


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