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Eepilogue ~ March, 1988(Reprise).

 約四ヶ月振りに再会した亜実の表情から、優人は彼女の変化を感じた。

 交際(つきあ)ってる時にいつも見られた、痛々しいほどに怯えた雰囲気が綺麗に落ち、同時にいつも感じられたひた向きさが、より剥き出しになっていた。そこには中途半端な男の同情を強く拒否できる強さも見え始めていた。

〝亜実、変わったな……〟

 優人は心の中で呟いた。

 亜実は口元に穏やかで優しい微笑みを浮かべた。彼女は無言のまま優人に会釈した。

 優人も無言で応えた。そして再びそれぞれ反対の方向に歩き始めた。

 再会はそれで終わった。

〝この石頭!〟

 小夜子の罵りの言葉が思い出される。

〝お互い様でしょ、それは〟

 優人が〝遙さんも流行(はや)らない人だね〟といった時に、遙が返してきた言葉が浮かんだ。

流行(はや)んないよなあ、おれって、きっと」

 優人は苦笑した。

 くすんだ時間が余りにも長く、惰性のままにそれを飼い慣らしかけていたから、優人は飛び出すことに不安も感じていた。

〝後で分かるよ、結局全てが前奏曲(プレリュード)だからな〟

 マスターの言葉だった。

 流行(はや)らない自分は、きっと新しい場所でも今まで以上の馬鹿を続けるんだろう――優人は自嘲気味に思った。

「ま、いいか、それでも……」

 優人は自分にいい聞かせた。

 これまでが前奏曲(プレリュード)なら、この先に何があるのか見てやろう、とも思った。

 坂を下まで降りた時、優人は見上げた。

 亜実の後ろ姿があった。

 それが一年前よりも毅然としているように優人には感じられた。


主要参考資料一覧(順不同)


【書籍】

「英語の恋の味わい方 アメリカン・ラブソングの世界」畑中佳樹(筑摩書房)

「スティービー・ワンダー詩集」景山民夫・訳(シンコー・ミュージック)

「ジャズ詩大全 第3、4、16巻」村尾陸男(中央アート出版社)

「続ジャズ・ヴォーカル名曲名盤171」山口弘慈(音楽之友社)

「ルパン三世 ジャズノート&DVD」大野雄二(講談社)


【雑誌】

「Jazz Life」1986~88年発行分より(立東社)


【CD(歌詞カード、対訳、ライナーノート含む)】

マイケル・フランクス

「アート・オブ・ティー」(WPCP-3478)

「N.Y.ストーリー」(WPCP-3608)

「カメラ・ネヴァー・ライズ」(WPCP-3612)

デイヴィッド・サンボーン

「ストレイト・トゥ・ザ・ハート」(WPCP-3563・輸入版)

「チェンジ・オブ・ハート」(WPCP-3564)

Eydie Gorme

「BLAME IT ON THE BOSSA NOVA」(GL-206・輸入版)

ハンク・モブレー

「ディッピン」(TOCJ-6420)

ハリー・アレン

「リカード・ボサノヴァ」(CMSB-28008)

マル・ウォルドロンfeat.ジャッキー・マクリーン

「レフト・アローン」(TOCJ-62013)

ジョン・コルトレーン

「ジャイアント・ステップス(+6)」(AMCY-1001)

「バラード」(UCCU-5001)

リコレクションズ

「プレイ・ザ・フェイバリット・チューンズ」(MDCP-4036)

スティーヴィー・ワンダー

「キー・オブ・ライフ」(POCT-1812~3)

松岡直也

「THE NAOYA MATSUOKA Best Selection」(WPCL-654~5)

大野雄二

「You & Explosion Band -Made In Y.O.-」(VPCG-84811)

「LUPIN THE THIRD "JAZZ" FOR LOVERS ONLY」(VPCG-84887)


【ビデオ】

映画「ラウンド・ミッドナイト」(WV-11603)


【TV番組】

NHK「日めくりタイムトラベル 昭和62年」(平成19年7月7日放送)


※なお、本編に登場する楽曲の歌詞については、当該楽曲が収められているCDの歌詞カードより引用しております。それらは全て上記CDの中に含まれますが、煩雑になるため詳細な記述は省略させて頂きます。御了承下さい。

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