階段の途中で
「今年の運勢、最悪だって」
手相占いの結果を見せながら、僕は友人に愚痴った。念願の建築事務所に入ったものの、ミスばかりで自信を失っていた。
「占いなんて気にするな」と友人は笑ったが、僕の心は晴れなかった。
僕は帰り道、近くの書店に寄った。
そこで、一冊の本と出会った。
「人生は階段、一歩ずつ」
見知らぬ著者だったが、なぜか惹かれるものがあった。
ページをめくっていくと、こんな言葉があった。
「階段の途中で立ち止まることは、失敗じゃない。次の一段を見極める時間なんだ」
翌日、上司から新しいプロジェクトを任された。小さな図書館の改修工事。
現地調査で、そこで働く司書の女性と出会った。
「この図書館、子どもたちの利用が多いんです。温かみのある空間にしてもらえたら嬉しくて」
彼女の真剣な眼差しに、僕の心は久しぶりに動いた。
設計に悩む日々。彼女は差し入れのコーヒーと共にいつも僕を励ましてくれた。
「焦らなくて大丈夫ですよ。一歩ずつで」
彼女の言葉が、先日読んだ一節と重なった。
三ヶ月が経ち、図書館は完成した。
木の温もりを活かした優しい空間。
子どもたちの笑顔が溢れていた。
「素敵な場所になりました。ありがとうございます」彼女は微笑んだ。
僕は気づいた。
占いが示してた「最悪の年」は、実は「変化の年」だったのかもしれない。
階段は一段ずつ。急がなくていい。僕は僕のペースで進めばいい。
読んでいただきありがとうございます。
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