魔族との邂逅
魔力を感知したエフューシスとセツは、何も言わずにカフェの外へ出た。
空を見上げ、何かを待っていた。
「一つ星と小僧は中で待っておれ」
そう言われたはずだった。
だが――俺は外に出てしまっていた。
理由は自分でも分からない。
ただ、じっとしていられなかった。
何かが空を駆ける。それがゆっくりと降りてくる。
羽ばたく音もなく。
「……女?」
いや、違う。
確信する――魔族だと。
二本の角を持つ女性の姿。胸と腰を小さな羽で覆い隠している。そして尻尾。彼女は空中に静止し、やがて、薄く微笑んだ。
「あら……四人もいたんですの?」
その声は、やけに優しく、やけに冷たい。
「三つしか魔力を感じなかったわ。背の高い女と、低い女と……男?」
ゆっくりと、視線が俺に向く。
「あら。あなたから、あの憎い女の魔力を感じるわ」
――ぞくっと背筋に悪寒が走る。
「彼女、死んだの?」
その問いに――
一瞬、空気が張り詰めた。
「セツ!結界魔法の準備を!」
エフューシスが声を上げる。
「すでに準備しています!」
次の瞬間、魔族は楽しげに笑った。
「まあ、いいですわ」
ゆっくりと手を胸に当て、優雅に一礼する。
「わたくし、魔族将軍レヴネと申します。以後、お見知りおきを」
そして――
「では、さようなら」
軽い挨拶のように、手のひらをこちらへ向けた。
手のひらから黒い歪みが生まれる。
「――っ!」
レーザーのような黒い魔力が、一直線に放たれた。
エフューシスが即座に杖を前へ振る。
次の瞬間、攻撃は彼女を透明な円を滑るように四方へ逸れ、地面を抉った。
「あら」
レヴネは目を細める。
「殺す気で撃ちましたのに……あなた、強いのね」
その瞬間。
周囲一帯に、透明な正方形の箱――結界が展開された。
「すみません!」
セツが叫ぶ。
「衛さんとレンを、外へ弾く余裕がありませんでした!」
「構わん!」
エフューシスは前に出る。
「小僧、よく見ておれ。これが――三つ星魔女――魔女の極地じゃ」
炎が、彼女を包み込んだ。
幼い姿は、燃え盛る炎の中で姿が変わる。
次の瞬間、そこに立っていたのは――
大人の女性だった。
赤黒く燃える短髪が風に揺れ、豊満な胸は幼い姿できていた魔女服に押し潰されている。そして圧倒的な魔力が周囲の熱を上げる。
その存在感だけで、息が詰まる。
「……」
俺は、言葉を失った。
ただ、目を逸らさずに立っていた。
正直、足が震えている。
それでも――逃げたいとは思わなかった。
エフューシスは、ちらりとこちらを見る。
「小僧」
低く、しかし確かな声。
「これがわしの本来の姿じゃ!特別サービスじゃぞ!」
俺は、その姿にただ見惚れていた。




