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セディ

 セディアルクと魔獣退治の報酬をもらったあと、レンの家へとお邪魔していた。


 「今日は……セディアルク様も、泊まっていってください!」

 レンがそう言うと、セディアルクは驚く。

 「わ、わ……いい……の……?」


 「もちろんです!」

 レンは迷いなく笑顔をむける。


 そのまま、みんなで食事をして、たくさん話して――

 やがて夜は深くなり、レヴネとレンは眠りについた。


 家の外に出ると、夜風が心地よかった。

 セディアルクが庭先で、夜空を見上げていた。


 「……寝れないんすか?」


 声をかけると、彼女はゆっくりと頷いた。

 「……はい……」

 しばらく、沈黙が流れる。


 それから彼女は意を決したように話し出す。

 「……破壊……魔法を……つか……うのが……怖い……の」


 ぽつり、ぽつりと。言葉を選ぶように、時間をかけて話してくれる。


 以前、強大な魔獣が現れた時に仲間の魔女を助けようとして魔法を放った時。

 威力が強すぎて――味方を、巻き込んでしまったこと。

 それが、セディアルクにとってのトラウマとなったこと。

 今はもう、三つ星魔女の資格だけが残っている。


 「……」

 俺は、黙って聞いていた。


 そして、静かに言った。


 「でも」


 セディアルクが、こちらを見る。


 「俺は助けてもらった。無理に魔法を使えとは言わないっす」


 一歩、近づく。


 「でも、セディアルクさんの魔法は誰かを傷つけるだけの魔法じゃないと思うっす。誰かを助けられる魔法だと俺は思うっす」


 セディアルクの目が揺れる。

 それから、目に涙がにじみ、こぼれ落ちる。


 止まらなくなった涙を、彼女は必死に抑えようとする。


 俺は、何も言わずただ胸を貸した。

 夜空の下で、嗚咽だけが小さく響いていた。


 しばらくして、レンの家へと戻る二人。



 「おはようございます!」

 レンの元気な声で、朝が始まった。


 「……おはよ」

 俺は瞼を擦りながら、リビングへ向かう。


 「お寝坊さんね!♡」


 レヴネが、からかうように笑う。


 セディアルクは、椅子に座って、こちらをちらっと見るが、目が合うと慌てて視線をテーブルに戻す。


 机の上には朝食が並んでいた。


 みんな話しながら食べて、片付けをして。


 それからセディアルクを家まで送ることになった。


 「セディアルクさん」

 玄関先で、俺は頭を少し下げた。


 「ありがとうございました。またカフェに来てください!」


 「またね♡」

 レヴネが、軽く手を振る。


 「また、うちに来てお泊まりしてください!」

 レンも、笑顔で続ける。


 セディアルクは、少し俯いて、しばらく迷うように黙ったあと。


 「……セディ……」

 小さな声。


 「……セディ……って……呼んで……」


 レンが、何かを察したように目を見開く。


 俺は、少し驚いたけどすぐに笑った。


 「じゃあ――セディまた来いよ」


 一瞬にしてセディアルクの顔が、ぱっと赤くなった。

 「……うん……」


 それだけ言って、扉を閉める。


 ――バタン。

 残された三人は、しばらく沈黙した。


 「……」


 「……」


 「……」


 「……かわいいですね」

 レンが、ぽつり。


 「だな」

 俺も同意した。


 そして俺たちは、また人間界へ戻る。

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