86 わたし、憑いてます。
きれいすぎる顔に囲まれると、昇天しかけるものらしい。
ノアは夢魔、女神、ちびっこ神様、ビーナス、ジンのやたら麗しいお顔のオンパレードに目がまわった。
ここどこ?わたしは誰?
また、気を失いそうになったノアを抱きとめて、ジンがささやく。
「ノア、遅くなってすまない」
「ほんとぉ、もうっちょっとで火あぶりの刑だったかもぉ」
「わーん、やだようぅ、ノアは魔女なんかじゃないのにぃ」
「おい、まじかよ。オレ様は魔女のつかいじゃねぇっつの」
『ノア、お前には我らがついておる』
だから、安心おし…。
いえ、いえいえいえいえ。わたくし、安心できる日が来ないことを確信しております!
ノアは、がばりと起き上がると、ご臨終の家族を見守るみたいな図になっている状況に辟易した。
そろいもそろって、元王様とか、現神様とか、絶世の美女とか、神の御遣いとか、濃すぎるのよ!
「あのあの、わたくし、まだ死にたくありませんの!」ノアは叫ぶ。
『無論だ。この国を治めていた我がいるのじゃ、いいようにはさせぬ』
「そうよぉ、あんなぁ、腰抜け理事たちなんか、つまみだしちゃいなさぁい」
「そうだぜ、まったくひどい奴らだ。自分のことしか、かんがえてねぇもん」
ジンだけは、微笑みを向け、ノアの手を握る。
「ノア、オレと結婚してください」
夢魔の圧がかかっても、ジンはめげず、手を握ったまま、ノアをひたむきにみている。
ノアはその言葉に真っ赤になりながらも、
「ジン様はメーア様とご結婚されるのでしょう?」
「? なんのことだ?オレは、ノアなしでは生きていけない」
「だ、だって、メーア様はあなたのお子を宿しておられるって」
「ば、ばかな。あれとは、指一本触れてはいない」
じろりとリンが目をすがめる。
「まぁ、さすが、おかたいですわねぇ」
「ほほほ、ジンはモテモテで、わらわもうれしいぞえ」
「いや、おまえ、メーアにめちゃくちゃひっつかれてただろ」
ビーナスの突っ込みがさく裂した。その通りだったので、だれもが、目を泳がせた。
「あいつが勝手に抱きついてくるんだ。オレからあいつに触れることは、ないっ」
断言するジンをじとっとみて、ノアが口を皮肉気にゆがめる。
「まぁ、メーア様はすばらしいお胸でしたし、わたくしなんかに比べて、とても、すばらしいお方でしたもの。遠慮なさらずに、おつきあいされていいのですわよ」
ものすごい皮肉を聞かされたジンは、ずーんとつぶれた。
『ノア、その辺にしておいてやれ。ジンの気持ちは本当じゃ』
夢魔は、人の心、奥深くにあるその人でも気づかない心の綾を読み取ることができる。
その言葉に嘘はないと、ノアは知っていたので、撃沈していたジンの手を両手で挟むと、優しくなでる。
ぱっと顔をあげたジンの瞳はうるみ、頬は紅潮して、得も言われぬ色気がただよっている。
若干ひきながらも、
「うん、知ってましたわ。ジン、わたしもあなたのことが大好きですわ」とノアが優しい声で、告げる。
輝かんばかりの笑みを返され、ノアは体を引くが、ジンはぐいと手を引き寄せ、ノアの頭をがしっと抱き込むと、あつい口づけを落とした。
◇
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