83 裏切りは堂々と
この中で、ひとり味方となるはずのロウエンは蒼白な顔で、口を閉ざしている。
多数決で動かされるこの理事会において、彼の劣勢は明らかで、どのように処するか、今はきめあぐねているのだろう。
ノアは、心にもないことで、弾劾される現状に覚えがあった。
転生する前の部内でその事件をおこった。
営業で、この上ない上客を引き入れることができたのだ。それは、ノアのリサーチ力と、相手の本質を見抜いた提案によるところが大きかったのだが、上司がそれを横取りした。
まぁ、それは、想定内だった。
しかし、あろうことか、その上司は、成績をあげていたノアを良く思っていなかったのだ。だから、ノアはこの大きな手柄も、すべて成約してきた功績を彼のものだといってはばからなかった。大ウソではあったが、これもサラリーマンの宿命である。
なのに、その上司は裏切ったのだ。
上司が会社の長年の顧客を裏切るような契約に切り替えたことで、この顧客はどなりこんできた。社長室へ。
その罪を、ノアにかぶせ、彼は、ノアのとってきたあたらしい成果をモノにした。
ノアは負けたのだ。
くやしい。わたしに力があれば。
でも、ここを去れば、次はない。追いつめられたノアは、社内でつるし上げにあい、みんなが嫌がる後始末のかかりにまわされることとなった。
ようは怒鳴り込んできた客の対応だ。もし、へまをすれば、ノアを切ればいい。
ノアはそんな環境で、耐え忍んでいたのだ。
すっと、背筋を伸ばすと、ノアは息を大きく吸う。
議場には理事とその侍従たちが、興奮した状態でノアを取り巻き、口々に魔女には死をと、雄たけびをあげ、騒然とした城内は異様な熱気に包まれていた。
我をわすれて、叫ぶ理事たちをみると、逆にノアは冷めていった。
ここで、負けをみとめるのも、正義をふりかざすのも、違う。そんな気がした。
ノアは、何も語らず、目を伏せて、彼らが落ち着くのを待つことにした。
そのころ、ジンとちびっこ神様は、こっそりと抜け出した教会の前を堂々とあるき、信者たちと交流していた。
協会の内部の者たちも、信者をおしのけて、神様を連れ帰ることはできないからだ。それれをあえて狙って、ミサのある日を選んだ。
楚々とした笑みをはりつけ、皆にひとことふたこと神様は話しかけると、ジンを見上げ、
「さぁ、救われないみなさまを探しにまいりましょう」
「はい。この国の神は、分け隔てなく、人を愛し、許したもうのですから」
神々しいまでの笑みをふりまき、二人は、なんなく、教会所有の馬車に乗って、大通りを直進する。
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