81 最後通牒
なみなみと注がれた果汁がグラスのふちを濡らす。
果樹園を領地の特産としている領主カルノは、その流れ落ちたしずくを指に受け、口にふくむ。
今年の出来もすばらしい。
ただし、小憎らしい小娘のおかげで、彼の功績はかすむばかり。
ロウエンの株はさらに上がり、他の領主との差が開きすぎていた。
これも、あの古のお方をつけた小娘による策略にちがいない。
理事たちは、陰でつながったり、切れたりを繰り返し、自分の領地を栄えさせることはもちろん、相手の隙をうかがっていた。
出過ぎた杭は打たれる。
それが、この世の掟だ。
ぐはわははははははっ
四角い顔を赤黒く染めて、ロウエンともども小娘を葬り去る策略を実行に移そうとしていた。
他の理事たちと。
◇
いっぱい、いっぱい遊んだので、疲れたので寝ます。
神様はジンと鬼ごっこをした。
それこそ、教会中をめぐって。
つぎに、かくれんぼだ。
鬼は神様、ジンは大きいから簡単にみつかりそうなのに、なかなか見つけられず、ギブアップの鐘をちりちりとならす。
リンがもたれていた手をまわしても届かない木の後ろから、彼は出てきた。
びっくり顔で、リンは口をあけて、間抜けな顔をさらす。
しばらくして、二人は大笑いした。
ひさびさに体を動かして遊んだ。
それこそ、こどものように。楽しすぎて、時がすぎるのを忘れてしまう。これぞ、休暇のすごしかたというものだ。笑いをおさめるのに苦労した。
「さぁ、お部屋にもどりましょう。風が冷えて参りました」
「うん、そうだね。今日は、休養日。とってもたのしかったぁ。ジンありがとう!」
心からの笑顔に、ジンは目を細めて喜ぶ。
二人は手をつないで、廊下をわたっていった。
ちょっと大きなお兄さんと仲の良い妹といった風だ。礼拝に訪れる人のない休養日は、二人にとって、かけがえのない自由を味わえる日になっていた。
これで、三週目、もう三回はごっこ遊びに費やしたのだ。このままで、いいとは思っていないが、この方法は意外に盲点をついていた。
部屋に戻った二人は、お風呂でこざっぱりすると、パンとスープの粗食に、かくれんぼで見つけてきた、丸い小さな柑橘の実を掌にかくして、もちかえったものを並べた。
あまい香りのその果実は皮が甘くて、太陽の沈むころの色で、果肉はすくないが、種は多い。果汁を楽しむというよりは、果皮のあまずっぱい香りと甘さがくせになる実なのだ。
「いっただきま~す」
「いただきます」
ふたりは、唱和すると、もぐもぐと食べ進める。量だけは出してくれるので、遠慮なく、遊びまわってお腹をすかせた二人は頂いた。
最後に、まるい小さな実を目の前でろうそくの火にかざして、つやつやする果皮をうっとりとながめる。
おもむろに、かジンと、じゅわっと柑橘類の香りが広がり、甘酸っぱく、すこしほろ苦い味が口の中に飛び込んでくる。
「おいしいですね」
「うん!ちょっと苦いけど、おいしいぃ」
満足気な顔で、ごちさそうさまを言うと、
彼らは早々に、寝室へ引き上げた。
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