74 ジンの覚悟
歌声がきこえる。
なつかしいふるさとの空が。
ジンはロウエンの屋敷の物見台に寝転がって、天を見ていた。
青空には雲が冷たい氷の粒子を運び、冷え冷えとした空気とともに、街を覆っていた。
ジンの故郷は豪雪地帯であった。だから、寒さはおなじみのものだ。雪下ろしを日課にしていたのがなつかしい。
あの頃は、雪なんて、もういらないと思っていた。祖父、祖母と住む家は、雪に押しつぶされそうで、まだ小さかったころは、軋む家の柱の音に戦々恐々であった。
ああ、あの頃から、オレは愛に飢えていたんだな。
ジンは小学生を出た頃、父母と死に別れていた。事故だ。
彼だけが奇跡的に助かり、父方の田舎の家に引き取られた。そこでは、なかなか友達もできず、都会育ちだった彼は浮いていた。
けれど、だんだん慣れて、友達らしき人もできたころ、彼に悲劇が襲った。
きっかけは大したことではなかったと思う、
隣人とのケンカだ。祖父祖母は逆恨みを受けて、殺された。
ジンは狂った。なぜ、あの優しい祖父祖母が死ななければならないのだ。
そして、彼は田舎にいることができなくなり、都会へ再びあぶりだされるように向かった。
学のない彼が働けるのは夜の街。
顔と話術で、店のナンバーワンにまでに上り詰めた。
けれど、客の猛烈なストーキング行為に悩まされ、彼は、鬱をわずらい、死を選んでいた。
オレは、誰か、誰でもいい。愛してほしい。そして、愛を返したい。
ジンは冷えていく、つま先がしびれだしたのを感ジンと、しぶしぶ体を起こす。
腰までのびた黒髪はゆるやかにウェーブし、彼の顔を覆いつくす。
泣き虫でいられたオレは、神様に必要とされていてうれしかったんだな。
孤独を埋めたい同士。愛をもとめてさまよっていたボロボロのオレを、ノアは迎えいれてくれた。
あの困ったような子犬の目は反則だったな。オレはあいつにとらわれて生きていくことが幸せだと気づいたんだ。
今、王国中をにぎわせている本人だ。
きっと当人は困っているだろう。けれど、オレはあいつをあきらめられない。
絶対にもう一度会って、二度と離さない!
ジンは北風に髪をなびかせて、アイスブルーの瞳に力づよい光を宿した。
ぐっとにぎりこんだこぶしは、決意をあらわし、彼は、教会の建物をながめると、ひとつうなずき、行動を開始するのであった。
◇
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