68 おもてなしされすぎなのも、ね。
その、震源地にノアとビーナスはいた。
ノアは若干、やつれていた。なんといっても、侍女がわらわらと集まり、身支度に風呂、寝支度まで手伝ってくれるという過剰サービスぶり。
なんでも、王族のお姫様が幼少期をすごされていたとかいう、やたらとファンシーなお部屋に通されたときは、卒倒するかと思った。
衣装は元のままでよいと言い張ったものの、侍女たちの鬼気迫る顔にまけ、とっかえひっかえ、朝、昼、晩と着替えさせられていた。
つやをだすため、くしけずられた髪はさらさらになり、香油をもみこまれた肌は輝かんばかりだ。
となりでぐったりと伸びているビーナスの毛もきらきらのつやつやだ。
夢魔様はいつもの古風なローブではなく、仕立ての良い正装に身をつつみ、どこからどうみても、王族であった。
わたくしの青春をかえしてほしい。
遠い目をして、ノアはため息をこぼす。
王宮の皆はどうやら、夢魔様のいい人として、ノアを認定しているらしく、最初、一緒の寝室をあてがわれそうになって、全力で遠慮した。
夢魔様のニヒルな顔は神が作りたもうた傑作である。そのご尊顔に微笑まれでもしたら、あっという間に陥落しそうでこわい。
ノアはめったに表情を動かさない夢魔様に、こっそり安堵しているのだった。
オレ様、いったいどうしちまったんだぁ。
黒猫のビーナスはせっかくきれいにしてもらった毛並みを乱すかのように、床にころがって、ふかふかの絨毯の上で背中をぐりぐりして転がっていた。
うおおお!砂浴びがしてぇ!
きれい好きなビーナスではあるが、バラの香りただよう香油で毛並みを整えられたため、さきほどまで、必死になめとっていたところである。
体中からバラの香りがしてきそうで怖い。
◇
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