67 ヴァカンス
見渡す限りの白い砂浜。
打ち寄せる波はやさしく、よせてはひきを繰り返している。
時節、打ち上げられた貝殻の白が、あらわれては消えていく。
波打ち際の低木の木陰、そこに、ロウエンとワラヤは薄絹を身にまとい、寝椅子にころがって、眠っていた。
のどかである。
恋焦がれたビーナスが消え去った今、傷心をなぐさめてくれるのはワラヤのみ。
ロウエンは抜け殻になっていた。
たぎらせていた恋心は、夜中こっそりあらわれた夢魔に刈り取られ、すっかり毒気がぬけたロウエンは、以前の動物にきらわれてしょげる只人に戻っていたのだ。
ワラヤはそんなロウエンを気遣い、この隠れビーチに案内したというわけだった。
すぎさっていく、雲を目で眺め、ただひたすら波の音を聞いていると、恋に身を焦がした狂騒ははるかとおいかすかな記憶になっており、ロウエンは静かに眠っていた。
「お館様!王城へすぐに戻られませ。王命でございますれば」
静かなビーチに似つかわしくない、緊迫した侍従のゴンザの強い口調に、気だるげに瞼をあけたロウエンは髪をかきあげると、ちろりとゴンザをにらむ。
せっかく、しずかな休暇をとっていたのに。
しかし、若輩者の理事としては、ここで、出遅れるのは恥だ。
すばやく、身を起こすと、隣でうっとりと見つめていたワラヤの手をとると、
「引き上げるぞ」
すぐさま、行動できる男、それがロウエンであった。
◇
王城は、つめかけた理事たちと、その取り巻きで、ごった返していた。
なんせ、数百年ぶりに、古の王が降臨して、勅をだしたのだから。
『理事を招集せよ』
その言葉は、コーネル国の王族はもとより、貴族の末端にいたるまで、震撼させたのは言うまでもない。
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