66 おくつろぎのところ…
『理事を招集せよ』
闖入者は、玉座の間から勝手に移動すると、後宮をつっきり、王族のプライベートな空間にさも当然という風に居座った。
ノアとビーナスはびくびくしながら、着いていくのみだ。
こ、こんなところではぐれたら、やばいですの!
オレ様まだ死にたくない!
重厚すぎる革張りのソファーにどっかとすわった夢魔をぎょっとした顔でみる一匹と一人。
『まぁ、ここで待つとしよう』
座る様に促すと、目で侍従を追い払った。
おそるおそる夢魔の座るソファの隣に座るノア。
ビーナスは爪を立てないように、そろりとノアと夢魔の横に収まった。
かちんこちんの二人は、冷汗をたらしつつ、夢魔を見る。
「おい、おっさん、これからどうすんだよ」
「そ、そうですわ。突然、押しかけて、こ、殺されるかとおもいましたわ」
『ふぉふぉふぉ、大丈夫じゃわい。まぁ見ておれ』
楽しそうに、肩をゆする夢魔。
そこへ、ドアをノックする音とともに、
「御酒をおもちしました」と声がかかる。さきほどの侍従の声だ。
『よい、持ってまいれ』
尊大な返事に、隣のノアはぎょっとしつつ、居住まいをただす。
ふかぶかと頭を下げた白髪の紳士は、彼らに視線を一切あわさずに、ローテーブルへ酒瓶とグラス、氷のはいったカッティングガラスの器をもち、一切音を立てずに並べていく。
とくとくとくっ
琥珀色の液体が、精巧なカッティングのほどこされたグラスに注がれると、丸く削られた氷が、くるんと回った。
ノアは、自分の目も回るかと思った。ああ、フクロウであったころの夢魔様がなつかしい。
すすめられたお酒はとても強いそうで、ノアとビーナスは酒精の薄いカクテルを作ってもらい、それをなめるように飲む。
横では、濃い酒精のかおりをただよわせながら、くいとグラスを傾ける夢魔。
ノアはくらっとした。
ビーナスはつまみのチーズに舌鼓を打ち、満足げである。
居座っている部屋には、大きな絵画が所狭しと飾られており、王族のファミリーと思しき様々な世代の人々がいきいきと描かれ、壁をかざっている。
それを緊張とともに見渡すと、中に、夢魔と似た少年の姿をみつける黒髪のつややかさはもちろん、シャープな顔立ちときりりとした目は今の夢魔より幾分若い者の、眼力があまりにそっくりで、目が離せない。
それに気づいたビーナスもその少年をみていると、夢魔が
『よく描けているだろう』とのたまった。
「うぇ!ま、まさか、アレがおやっさん?」
「まぁ、お若いころも素敵ですわ」
褒められたからか、すこし口元をゆるめ、目をすがめる。
やはり、アレは夢魔様らしい。
◇
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