64 異次元の生き物たち
すさまじい圧で、夢魔に口づけを落としていった美女のいた空間をじっと見ていたが、これ以上なにもおこらないことがわかると、そっと、夢魔のとなりへもどる。
表情の固まったままの夢魔を見やると、ようやく、そろりと目だけうごかして、ぐいと唇をぬぐった。
…いやだったんだ!
ビーナスとノアは心なかで叫んだ。
『久々のあやつも、変わりなかったな』
変わりないの!
心の叫びは、声にだせないが、おそろしい想像が展開されるのをとめられない。
ちょっとしたストーカーである。
ノアは、さきほど、人型でいてくれたらと、軽いきもちで夢魔にいったことを早くも後悔していた。あれは、やばい部類だわ。
「ねぇ、夢魔様、わたくし、ここがどこだかわからないのですけれど?」
無理やり、話の展開を変え、ノアは疑問に思っていたことを聞く。
『うむ、ここは我の隠れ家じゃ』
「なぁなぁ、オレ様はいつまでここにいればいいんだ?」
鏡の向こうで、仁王立ちして、爪を立て背伸びするビーナス。
『お?でたくなってきたか』
すいっと手で鏡の表面をなでる仕草をすると、ころりと黒猫が鏡からまろびでてきたか。
「どわぁ」
黒い毛玉がころころと転がり、ノアにぶつかり、べたりと床に張り付いてとまった。
『よし、だいぶ元気になったのぅ』
「おうよ、オレ様はあんのやろうに、いいようにされて、もう、死にかけてたぜ」
ひげをそよがせ、なぜか、威張り気味にビーナスがのたまう。
「うん。たいへんだったのよね。わたくしはみているだけで、お助けできなくて申し訳ありませんわ」
へにゃりと眉を落とすと、ノアはしゅんとなった。乙女の危機に間に合わないなんて、ヒロイン失格だ。
『すまぬな。我もあやつを追い払いつつ、おまえさんを助け出すのは難しくてのぅ』
「ねぇ、わたくし、どうして、夢魔様のこの空間にいれていただきましの?」
『我を追い回しておった、あやつはノアからジンを奪い返すためには何でもする』
ぞぞぞ、と背筋をつめたいものが走り抜ける。
リンと同族というけれど、ストーカー気質はちょっと似ているかもしれない。
『最後は、ジンだな』
ここに、ひとり足りないメンバーを思い出し、わたくしは会いたくてどうしようもないくらい恋しくなった。
あら?わたくしもストーカーでは?
◇
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