62 夢魔の追っ手?
ざっと、夢魔が手をふるうと、壁にかけてあった姿見にビーナスの様子が写る。ロウエンに掴まって、夢魔が助けたのだが、とてもやつれていた。
「そう、そうですわね。人間の欲望は果てしないのですわ」
『ノア、そなたは、我らをみても、仲間としていてくれた。得難いのだ』
「まぁ、わたくしこそ、みなさまとご一緒に過ごせて幸せでしたわ」
ノアは、寝椅子からそろりと起き出すと、はだしのままのつま先を乳白色の大理石に乗せる。ひんやりするはずの石の上は、ほのかにあたたかく、不思議な感じがした。
あたりを見回すと、調度品は古めかしい意匠の彫刻が壁のいたるところに掘られ、透かし彫りをほどこした分厚い大理石の向こうには、庭園が広がっている。ここは、熱くも寒くない。
ここはどこかしら?
『ノア、ようやく目覚めた所、申し訳ないのだが、我はあるお方に追われる身でな』
「はい?」きょとんとまばたいたノアは遠い目をした夢魔を不思議そうにみやる。
夢魔が、見つめていた虚空を裂いて、女が現れた。
むわっ。
花の濃密な香りが舞い込んできて、ノアは一歩あとずさる。
ゴージャスな金髪に彩られた卵型の輪郭にきりりとした眉、きらめくエメラルド、すらりとした腰から下はドレープのたっぷりととられてスカートで、その先にある足元は床についておらず、靴のまま浮いていた。
今、現れたこの方も人ではないのかしら…。
ノアは、夢魔の青年と突然あらわれた美女を見て、思考する。
鏡のむこうの黒猫は、毛を逆立てて、からだを大きく見せ威嚇していた。
このような、人外たちの交錯する場所に居合わせたことをノアはどう思えばいいのか、途方にくれた。
◇
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