61 目覚めの時
ノアはぱああぁぁと晴れ渡る、空の上を浮いていた。
雲は真っ白にかがやき、まわりを高速で過ぎ去っていく。
光の乱舞する雲の中には、虹がかかり、ノアはそれに手を伸ばした。
◇
『ようやく、目覚めたか』
ノアのそばにはフクロウが一羽。
夢魔はノアのほおに頭をすりよせて、うれしそうに鳴いた。
わたくし、触れているの?
ぼんやりとした視界はやがて、きっちりと像を結び、フクロウの羽の羽毛までを判別するまでにクリアになった。
寝かされていたのは、見たこともない群青のビロードの寝椅子で、そこに、教会の神官たちがみにつけているような、一枚布をまきつけて着るような服をきていた。
あら?わたくし、どうしてこのような服で、ここはどこ?
そろりとフクロウを見上げて、目をしばたくと、フクロウは、ちょんと、後ろにとびのき、羽を広げて、その場でふわりと旋回し、光の粒子を振りまく。
まぶしくて、目を閉じた後、目の前にあらわれていたのは、いつぞやに会った死神だった。
あ。
そのときの情景がありありと浮かび、教会の裏手で出会ったフクロウとつながる。
ノアは、この夢魔がずっと、普通のフクロウの姿でしか会っていなかったけれど、実のところ、もっと別の実体があるのではと感じていたことを思い出した。
やはり、そうなのだわ。ビーナスだって、女性体になるのだもの…。
明るい室内で見る死神の姿は、驚くほど端正な顔立ちで、シャープな顎のラインに、長い首筋、さらりとくせひとつない黒髪は、女のようにもみえる。
日にやけてもなお白い肌というのだろうか、作り物ではないのに、人間にはない透き通るような肌は、内側から発光しているかのように美しい。
あたたかな光を帯びた眼は、目じりが少し上がっており、硬質な印象を与える。
ノアは、青年を上から下まで眺め、夢魔はどうして、フクロウでいたのかしら?と思った。
こんなに麗しい姿でいれば、もっと、人を寄せることができたはずだ。
「夢魔様。どうして、そのようなお姿をいつもはされておりませんの?」
『うむ。この姿をとると、碌なことがないゆえな』
「え?とてもお美しいから、ずっとそのお姿を眺めていられるのは、わたくしでしたら幸せですわ」
『ふふふ。ノアはうれしいことを言ってくれる。だが、大概の女どもは我を手籠めにしようと画策するゆえな』
「っまぁ。そんなひどい」ノアはのけぞって、首をふるふるする。
『人間というのはそういうものじゃ』
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