56 ビーナスの大ピンチ
ひぅ
やめろぉ、この野郎!
ビーナスは誓いの場から、やっとのことで、出たとおもうと、ロウエンの住む本館に閉じ込められ、彼に抱きすくめられていた。
行動を制限されてしまう呪いを受け、彼女は、彼の意のままに操られていた。
ああ、このまま生きるくらいなら死んだほうがましだ…。
耳朶をかむ彼の熱い唇はただただ嫌悪感しかなく、ざわざわと気持ちの悪さが這い上がってくる。けれども、身動きがとれず、彼女のかすれた息だけが、もれた。
◇
ノアの意識は朦朧として、覚醒しては、さまざまな場面を見るのみで、手をのばしてもふれることができない。
さきほどは、ビーナス様が教会で式を挙げている場面で、悲痛な叫びに、心がちぎれそうになった。助けてあげたいのですけれど、とどかないのですわ…。
ああ、神様まで、あのような嫌な役をさせられて、わたくしに力があれば。
くやしくて涙がこぼれるが、実体をもたない彼女には何もできないのだった。
◇
『そろそろ、我の出番じゃな』
フクロウは、ロウエンの屋敷のてっぺんから、ばさりと翼を広げて、滑空すると、主人のいる部屋のベランダに舞い降りた。
中では、死にそうな顔をしたビーナスが、服を引きはがされていた。
『ちょっと、おそかったか』
目をすがめて、首をぐるんとまわして、見なかったことにしようとしたが、また首をぐるんともどすと、目を閉じた。
フクロウの羽がふわりと舞あがったその中心部に黒い核が生まれ、そこからじわじわと漆黒の男が具現化する。
にじみ出るように空間に姿をあらわしたのは、いつぞや、ノアをさらった青年の姿であった。
◇
「いいね!」「おもしろい!」と思ってくれた方は、
☆☆☆☆☆ → ★★★★★にしてくださいね。
皆様のブックマーク、評価は作者のモチベの元ですにゃん☆
勇気を出して(^^)/~ ぽっちとよろしくお願いいたします!




