55 妻と愛妾
ちびっ子神様は、なんとなく、このままでいいかと、あきらめの境地に至る。二人の手をとると、台の上で重ねる。
そこに、重すぎる錫杖をぷるぷるする腕でささえながら、彼らの手の上に振りかざし、…コントロールしそこねて、ロウエンの上に落とした。
ゴスン
苦痛にゆがむロウエンはかろうじて、持ちこたえると、にっこり笑ってちびっ子神様を射殺しそうな目でにらんだ。
ひきつった顔に汗をたらしつつ、なんでもなかったように、錫杖をもどすと、
「よろしい」
と一言ゆるすと、彼らを祝福する音楽隊の美しすぎるハーモニーが聖堂に満ち満ちた。
◇
ビーナスは、おのれの心と口を制御するすべを奪われていたのだった。
◇
ワラヤは監禁、もとい、ロウエンの屋敷の一角に軟禁状態であった。豪華な室内は婚約者としての待遇として申し分のない扱いだが、ロウエンの私室である本館ではなく、別館の最上階に閉じ込められていた。
ロウエンは出会った頃は、それはそれは輝かしい未来と凛々しい姿でワラヤを歓迎してくれたものだが、今は、めったに訪うことはない。
彼女は、あろうことか、ロウエンの妾の一人として、この豪華でさむざむしい一角をあたえられるに過ぎない存在になっていた。
◇
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