53 ちびっ子神様からのビーナスへのサービス?
ビーナスは、怖気をふるって、逃げ道はないかとぎらつく目で、教会の控え室の扉をにらむ。
あと、数刻で、奴がやってきてしまう。
いらいらと、足をひくつかせ、手袋をはめた手を握りしめる。
あんなやつ、とっととワラヤとかいう奴と結婚しちまえばいいんだ!
この時、ビーナスは気づいていなかったが、この国では妾はめずらしくない制度であった。
◇
ちびっこ神様は、扇をもてあそび、放り投げてはぱしりと受け止めるという、淑女がみるとひっくり返りそうな遊びを両手で同時にしていた。
だって、暇なんだもの。
神界にかえるわけにもいかず、ノアもいない今、彼女には、助けはない。
だされたもの、着させられたもの、いわれるがままに謁見をこなし、祈りの間で見世物になる。
そんな、ただ流される毎日。
ノアと過ごした温泉郷の刺激あふれた毎日は、大切な想い出だ。
そんな、ちびっこ神様は、なぜか、飾り立てられていた。
重い黄金の冠に、マント、錫杖をもたされると、よろめきつつ、教会の誓いの場に誘導された。
なんとなく、ざわついた空気を感じ取り、首をひねる、ひねりたいところだが、頭に乗せた王冠がずれそうになって、思いとどまった。
かよわい乙女の装備じゃないわねぇ。足に落としたら、確実に骨がおれるだろう重さだ。
荘厳な演奏と讃美歌の流れる誓いの間に、理事の正装を着たロウエンが立っていた。
浅黒い肌を引き立てるのは明るいグリーンのジャケット、タイトなパンツには銀糸で山の模様が描き出され、彼の領地を示している。首からかけているのは、指の爪を超える大きさの輝石たちで、金の台座はずっしりと沈むほどに重い。そのネックレスに負けない強い光を帯びたグレーの瞳に、整った鼻梁、すっきりとした顎のラインは赤茶の髪に彩られ、国中の美女たちが釘付けになるであろう美貌だ。
その目線の先には、メーアに手をひかれ、歩いてくる、彼の愛しの人がいる。
ビーナスは心のなかで、あらんかぎりの罵詈雑言をはいていたが、いかんせん、見た目はかよわい美少女である。
しかも、見事な曲線美を持った肢体は、彼女の体のラインにぴったりとつくられているのだが、真ん丸な双丘、くびれた腰、なめらかな肌、けぶるような長いまつげは、どうみても絶世の美女である。
そこへ、ちびっこ神様は、誓いの宣誓をおこなう役割をあてがわれ、祭壇にて待つこととなったのだった。
◇
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