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運がないけど、憑いてます☆  作者: ももんが☆


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5 男の方からも、女の方からも襲われてますぅ

「ふんぎゃぁ。なななな、次は何がぶつかってきましたのぉおおお」


 僕が着いた先は、ヒロイン様のベッドの上でした。さらに、彼女の上です。着いた両手は少女の胸の上でした。


 ええ、ぺったんこでした。オレは遠い目をおもわずしてしまいました。


「っどど、どーなんてるのですか。あ、あなたはまさか、あらたな人買いですかぁ?」


 かなり誤解があります。オレは神様の執事もとい下僕です。そっと、胸から手をはずし、のしかかっていた体をベッドからおりて、お辞儀します。


 まじまじと見ると美少女です。目はぱっちりと大きく、黒い瞳がきらきらと輝き、ばかそうなセリフをわめいていますが、理知的な瞳をしているのが印象的でした。


「あのーお嬢様、なにかありましたかぁ?」どっきりな事故から数分、闖入者をしばし見つめていたわたくしは、部屋の外からの声に気づきました。


 そーと部屋の木の扉から顔をだしたのは、わたくしもびっくりの美少女メイドさまでした。

濃いブラウンの髪はクルクルとカールして、お姫様のようです。さらに、異世界の主人公といえば「ピンク」な、瞳をされているではありませんか!


 なんということでしょう!ヒロインのわたくしよりもヒロインらしい儚さと清楚さをお持ちです。ついでに、胸も…。


 わたくしのベッドの傍からさっと退避したスレンダーな男は、ながい黒髪を手でさらりと後ろへながし(髪を切る時間もないから)、営業用スマイル(前職はホスト)を全開に、メイドへつかつかと歩み寄ると、手を取り、ひざまずいた。


「お会いしたかったです。あなたこそが、僕の女神。僕はジンと申します。どうぞ、ジンとお呼びください」


 アイスブルーの瞳には怪しい光をうかべ、紅い唇は余裕に満ち、くらりとする美声である。上目づかいに手に軽くふれるだけのキスをすると、そのままメイドの少女をエスコートして部屋から出ていってしまいました。


 ありえないくらい自然なアプローチだったわ…。これが持てる者と持たざる者の違いというやつですね…。


 そんでもって、えーと、さりげなく、あの人わたくしにのっかかって、あ、あろうことか胸までさわっておきながら、メイドさんと仲良くなって、行ってしまいましたね。


 ものすごく、疲労感が…きました。


 ええ、そうです。メイドさんかわいかったですもの。絶世の美少女さんでした。あれなら、この世界でも成り上がりなんて、ちょろいです。


 なんにももってない、わたくしの不徳の致すところでしょう。食べ物欲しさに、地味な黒髪も切って売ってしまいましたし。売れるものなんて何もないんでした。てへ。


「はー下働きでもいいから、屋根のある部屋と食事つきのお仕事、欲しいですわね」

 ぼそっとつぶやいて、ハタと気づきました。


 そうです。働けばよいのでは?ヒロイン認定されたわたくしだって、この世界では、あっさり行き倒れるのですもの。設定なんて、ぶち壊してしまえばよいのですわ!


 ばーん。


 木戸を思い切りあけはなち、ここのご主人とおぼしき青年を探しにいこうと、わたくしは、輝かしい一歩を踏み出しました。


ばたーん。


あれ?


 ここのご主人様が鼻血をたらして、倒れているではありませんか。

 

 も、もしかしてわたくしのせいでしょうか。やってしまいました。早速、雇い主をたたきのめしてしまったようです。逃げた方がいいでしょうか。いいえ、やはり人として、助けて、お詫びしなくては。


「だ、大丈夫ですか。ごめんなさいです」


 そっと、青年に声をおかけします。廊下の向こうから、誰かがこの音を聞きつけて、かけてきたようです。

 ヒールの音がものすごい勢いで近づいてきたかと思うと、おもいっきり、床にころがされていました。あいたたですわ、ヒールが後頭部に直撃しています。わたくしヒロインだそうですけれど、よく地面と仲良しさんなのです。気がとおのきました。


「キャー、ロウエン様、お気を確かに。わたくし、ワラヤがついておりますの。こ、こんな小娘なんて、消えておしまい」


 がっがっがつ。


 高速でヒールのけりが後頭部、あご、下腹にきまりました。


 なんて武闘派なお嬢様でしょうか。すばらしい脚線美です。出るべきところは出て、引っ込むところは引っ込むという豊満バディでございます。切れ長の目の妖艶な美女様です。持っています。

 

 ええ、すばらしい女性的魅力を、お声までしびれるようなハスキーボイス。きっとこの倒れていらっしゃるロウエン様もメロメロなのです。ゆたかなお胸で顔がふさがれています。


「ぶはっ。な、ワラヤか。どうした、今日は来ない予定ではなかったか」

「そんなぁ、ロウエン様ったら、わたくしとの約束のこと、ま、さ、か、お忘れではないでしょう?今日は私たちの、婚約記念日ではありませんか!」


 そういえば、この銀髪の美女様は、とてもゴージャスなドレスをお召しでした。背中あきの最新モデルです。たっぷりとある胸は押し上げられてこんもりしています。

 

 まぶしいくらいのすんばらしいきらびやかなドレスです。わたくしはちらりと自分のきせていただいた服をみました。うん、これでは、チープなお子様着ですわね。


「やぁ、それは悪かったね。つい、ひろった黒猫様と仲良くしていたものだから」

「いいんですのよ。まぁ、珍しいですわね。ロウエン様が猫だなんて。わたくしにも見せてくださいますよね!」


 さっと二人は腕を組んで、廊下を過ぎ去ってしまいます。あま甘です。部屋の隅に転がったままのわたくしなんて、ちり芥といったところでしょうか。


でも、いいんでしょうか、あの黒にゃんこ様は訳アリですが。


 ずきずき痛む、後頭部やらおなかですが、黒にゃんこ様で凝りまくった体はそれ以上に痛いのです。あ、馬車にひかれたときのケガも、でしたね。そこかしこに、あざができている気がします。

 いまさら確認するのも、やぼというものですね。


 いろいろ疲れたので、遠慮なくお部屋に戻ります。いいです、ここは一人部屋ですが、ベッドもテーブルもあるんですもの。街をさまよっていたころとは違って、快適です。お金もちって素敵です。


 ずきずきする体を引きずって、ガラス戸をバカっと外に開けると、わりと小高いところにあるお宅であるとわかりました。ここは良い暮らしをされている方々区画ですね。なんとなく、街の景観も均整がとれて、美しいです。


 街路樹として植えられた木々は紅葉のためか赤や黄色に色付いています。くすんだ赤の三角屋根は雪対策用にでしょうか、傾斜は強い構造です。雪がつもった景色はきっとメルヘンです。


 この階層より下の緩衝地帯とおぼしき崖の下には、さらにコンパクトな建物が立ち並び、レンガ造りの三階建て以上のお屋敷は、マッチ箱を並べたように細いまがりくねった道沿いにずらりと並んでいます。

 

 この世界は建築技術も進んでいるようで、中世ヨーロッパといった風情です。いったことはありませんけれど…。


 わたくしの元いた、ど田舎とは違いますね。おしゃれで、清潔な街並みは、ふらっと旅行にいって、しばらく滞在したいと思わせる魅力があります。


 あ、あそこに教会らしいものもありますね。あそこへいってみるのもいいかもしれません。


 異世界にきてから、ひとりになったのは、初めてかもしれません。


 なんだかんだ、黒にゃんこ様は、わたくしのお話し相手になっていただいていました。一人というのは心細いものですね。


 窓から吹き込んできた秋風に短くなったストレートの黒髪がさらりとゆれた。



あれれ~?おかしいぞ~…。

なんか、おもってたのちがーう☆

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主人公が可愛かったです!
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