47 ロウエンの片思い
ジンは、ロウエンのよこした従者および護衛団にすみやかに引き渡されると、ノアと再会することもなく、黒猫とフクロウとともに、再び、豪華だが、自由のない世界へ戻ったいた。
ビーナスはロウエンを見かけると、すばやく、ジンの後ろへ隠れる。それがかなわないときは、夢魔の後ろに隠れるという無駄なあがきを繰り返していた。
ビーナスに求愛したロウエンは婚約者のワラヤからはひっぱたかれたようだが、まだ、懲りていないらしく、黒いものを見かけると、すべからく反応する。
なんでも黒猫に見える病にかかっているのだ。
ロウエンの屋敷には、数々の下働きの者がおり、ジンは賓客として、扱われていた。
ビーナスをこよなく愛するお館さまには辟易とするものの、この館で働くのは誇りでもあり、大切な仲間のいる場所でもあったからだ。
彼らは、ロウエンの仕事柄、王都への出入りに付き合うことも多く、理事であるお館さまは、王宮での地位は王族につぐものだ。
彼ら九人の理事は、代々世襲制であるが、理事を語れるのは、三十を超す貴族の中から、選出されなくてはならない決まりだ。誰もが、なりたくてもなれるものではない。
その輝かしい九人の一人、それが、我らが主なのである。
猫に首ったけだが…。
ロウエンは逃げ回るビーナスに無理やりせまることもできず、もんもんとして過ごしていた。婚約者であるワラヤにはがっち身辺をガードされ、久々の王宮へやってきたところだ。
これからのワンシーズンは議場から出ることはままならず、諸々の国内の重要事項を決定する必要があった。
自らの治める土地を知り、それを栄えさせるのはロウエンの役割の一つであり、勤めでもあった。そのことから言うと、ジンを出向かせた、温泉郷ルノコの一件は、彼の傑出した事業の一つとして誇れるものであった。
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