43 神様 すこしだけまってください
戻るという言葉をノアは信じられないおもいで、目を見開き、ついに、ジンの顔をみた。
「ノア様。僕は、神様から遣わされてあなた様の元にきました。数々のご無礼、お許しください。でも、どうしても、あなた様の傍を離れることは、できません。けれども、神様を子困らせるのも本意ではありません。どうか、許してください」
神様の前でひざまずいて、ノアに許しを請う。
さらりと流れ落ちた髪の行方を見るともなしに見やり、ノアは首をゆるゆると振る。
「どうか、そのように謝らないでくださいまし。わたくしは、あなたを束縛したくはありませんの」
ノアもすとんとその場に膝を落とし、ジンの手を取る。
はっと顔をあげたジンの瞳は乾いていて、ノアは泣き虫であった彼がずいぶん変わってしまったことを何とも言えない気持ちでみやる。
「わたくしこそ、あなたに謝らせてください。貧乏でごめんなさい。嫌な仕事を押し付けてごめんなさい。それに、それにっ、あなたのお好きな方から引き離していたことを、ほんとうに、ほんとうに、ごめんっな、さ、い」
ノアは体中に冷たい嘆きの震えがはしり、最後は絞り出すような声で、ジンにあやまった。
もっと、はやくにジンを手放すべきだったのに。つい甘えてしまった。後悔してもしきれない。
「ノア、さま。僕は、あなたの傍にいることが幸せでした。だから、ロウエン様の元にはもどりたくありませんでしたよ。もっと、はやく、あなた様にわたしの気持ちを伝えられていれば、よかったのに」
ジンは、ノアの手を引き寄せ、彼の頬にあてる。
乾いてしまった瞳からは、熱が消えうせ、愁いをおびて、まつげが震えている。
「いえ、そんなんこと、僕がいえたことではありませんね。僕は臆病でした。ノア様はお強くて、僕無しでも生きていける。そんな気がしていたから、あまり、強くいって、あなた様を困らせるのは、嫌でした」
ノアは光の消えたジンの瞳をみて、悲しくなった。彼が遠くにいってしまう。
「あ、まって。わたくしは、そんな一人ではいきてはいけませんの。この世界にきてからは、誰かがわたくしの傍におりましたから。でも、わたくしはそれではいけないのですわ。ひとりでこの世界に生きていけるようになりたいと願っていました」
「そうよぉ。ノアは強いけど、寂しがり屋さんなんだからぁ。あたしの側にずっといるの!」
地団太を踏んで、ちびっこ神様はノアの肩に手をかけて、猛烈に勧誘した。
「ふふふ。神様どうもありがとうございます。身に余る光栄ですわ。けれど、わたしはこの世界では地上界の生き物ですもの。ジン様や神様のように神界にはいけませんわ」
悲しそうな、それでいて、ふっきれたような笑顔で、神様に愛おしそうな目をむける。
心から言ってくれたその言葉はノアの心を温めてくれた。誰かから、こんなに必要とされる日がくるなんて。ものすごく幸せだ。
「どうもありがとうございますの。お二方には、わたくし励まされてばかりですわね」
にこにこと明るい笑顔に戻ったノアは、そっと、ジンの頬から手を引き抜くと、その手をもう一方の手で包み込む。
「ジン様、わたくしは忘れませんわ。あなたと見た夕焼けと一番星を!」
ジンを立ち上がらせると、ノアは花咲くように、笑顔を振りまく。
「わたくし、みなさまの幸せをみるのが大好きですの!ですから、ジン様、あなた様の思うように生きてくださいまし。わたくしも精一杯この地で生きてみます」
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