42 ジンと神様の邂逅
さざ波をひくように、ジンを取り囲んでいた女性陣が挨拶をして、退出していく。夢の時間はおわりなのだ。
彼は何をするでもなく、ただ自然体で、そこにいるだけで、彼女たちを誘導し、辞去のあいさつを述べさせいるのだ。
ジンは最後の一人を見送ると、ゆったりと、振り返り、愛しい少女の元へ、グレーの瞳をひたと向け、歩を進めていく。
コツコツコツ
すこしずつ近づく足音に、ちびっこ神様はノアのスカートをぎゅっとつかみ、ごくりと唾を飲み込んだ。
見上げたノアは緊張のためか、心なしか青ざめている。
いまさら、どういって会えばいいのかわからない。
それが、ノアの心境だ。ジンはメイドと撚りをもどして、彼女の腕に収まったのだ。わたくしの出番は、ジン様のご活躍をそっと見守るだけの、事業主だった。
一緒に住んでいたのは彼が、わたくしの従業員だったからで、彼は望んでそこにいたわけではなかったのだ。
ぎゅっと心臓をしめつけられるような、苦しがノアを苛み、苦し気に息を吐く。
コツン
ついに、ジン様が緞帳の前に来てしまった。
心を決めて、ノアは、緞帳の陰から、一歩踏み出す。
わたくし、笑顔でいられている?
伏せがちな目はジンの足元に固定されて、やさしく緩められた唇のはしは、固かった。
ジンはしびれるように、立ち尽くす。
さきほどまでは、流れるように数々の女性たちと会話を楽しんでいたのに、肝心のノアを前にして、どのような言葉をかければいいのか、呼吸も忘れて、ノアの顔を凝視する。
横にじっと立っているのは、かつての上司である神だ。
彼女は、まっすぐにジンを見て、彼の出方を窺っている。
ジンとノアは同時に、あの、と声を上げて、お互い呆然と顔を見合わせる。
勇気をだして、声を出したのに、かぶってしまい、気まずい空気が流れる。
さっきまでにぎやかだった大広間はがらんどうで、より、空虚感が増していた。
「ねぇ、あたしのこと、おぼえてる?はやくもどってきてよぉ」
ついに、沈黙にたえかねて、ちびっこ神様は震える声で、ジンに助けを求めた。母のお気に入りでもあったジンを早く取り戻さなければとあせっていたのに、いつの間にか、ノアとの生活になじみ、教会になかば囚われの身となり、神界に戻れなくなって久しい。
「はい。覚えておりますよ。もちろん。神様には僕を守ってくださり、いまさらながら感謝の念を禁じ得ません」
ジンは誠意のこもった声音で、立ちすくむ神様のまえに片膝をついて、目線を合わせ、微笑んだ。
おもわず、儚さと透明感のある笑みにぼぅっとみつめ、神様しばらくすると頬を染めて、目を泳がせた。
「そ、そう。ありがたくおもいなさいな。お母様のところにいるよりは数倍もマシでしたしょう?」
つんとあごをそらして、金髪をふわりと揺らす。
「それは、ノーコメントといたしましょう。神様、ですが、わたしはここにとどまりたいのです。ノアのそばに」
「む、むりよ。あたしはお母様の命令を聞かなければ、ダメなんですもの。ジンはあたしと神界にもどるの!」
悔し気にゆがめた目からは、涙がもりあがる。
ちびっ子神様はほんとうは、ジンを連れて帰りたくはない、でも、お母様が恐い、というジレンマで泣きそうだった。
その頭をジンは優しく撫でてやり、
「はい。あなたさまと戻ります。でも、すこしだけ、まってもらえませんか?」
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