40 幸せのあとさき
ふぉふぉふおっ
絶好調で、会場の外へ飛び立った夢魔は、久々の大量のごちそうに大満足であった。
やはりノアといるといい。
夢魔はもっともっとこの幸せをかみしめて、退屈で、退屈で仕方なかった毎日をバラ色に染め上げてくれたノアを心から愛していた。
それゆえ、ノアにからみついてくる者どもを蹴散らしたくなる。
独占愛であった。
◇
ちびっこ神様の下僕から、ノアの自称下僕として、神官となり過ごしてきたジンは、久々のノアに近づける機会に、心は高ぶっていた。
おもえば、一つ屋根の下、ノアを暮らしていたのだ。もっと、あの時、アプローチしておけば。
あの頃は、その幸せがずっとつづくと信じていたし、疑ってもいなかった。
でも、今は――――ジンに会える、それだけで幸せな気持ちになるのであった。
◇
ノアは複雑な境地であった。
これを最後に、引退し、こっそり、一人皆に事業の財産を分けて、消えるつもりだったから、住んでいた家の持ち物はすべて、片付けていた。
そして、来るべき時には、あの家は売りに出され、完全にノアのものではなくなる。彼らに残しておこうかと思ったが、いつ帰るともしれない家は物騒だし、想い出に浸るのはかえってつらい。ノアは旅に出ようと思っていた。
◇
雪が舞い散る丘の上。
かつて、ジンと登った夕闇から空の一番星を見上げたその丘に、すらりと音をたてずに歩く女が、崖のすぐそばで立ち止まった。
あおられた風は身を切り裂くほどに冷たく、雪交じりの風は長い金髪を舞い上げ、襞をたっぷりととった装束をはためかせている。
常人であれば、恐れをなして近づけぬ、崖の突端に、その女は強い意志を秘めたエメラルドグリーンの瞳をきらめかせ、きりりとした眉は優美な線を描いて、鼻梁に続いている。
寒さのなかでも色を失わない赤い唇は、何事かを呟いていた。
わらわの娘はいずこに…。
◇
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