38 そんなばかな!
会場の中にあって、長身なロウエンは目立つ。しかも、小麦色の肌に和装といういでたちは、めったにおめにかかれない美丈夫とあって、会場からほぉとため息がもれる。
仕込みがあったんじゃあないかしら?
ノアはちらりと夢魔をみたが、夢魔は泰然として、金の止まり木に鎮座している。
袴をばさりともちあげて、階段をのぼり、ステージあがると、きれいな一例を会場の淑女に向けて、微笑みともに返す。
番号札を照合したノアはまぎれもない十番の札に、
「では、こちらへ。夢魔様にあなたの想いをぶつけてください!」
夢魔のとなりへ誘導すると、
ロウエンはうむ、うなずき、
「どうか、僕と結婚してください!」
とのたまった。
会場は静まり返った。
ノアはぎりぎりとかたまってしまった首を、かろうじてロウエンの方へ向ける。夢魔ならぐるんとひとまわりできるが、人間のノアには無理な話だ。
ロウエンは、ひざまずき、夢魔の下で待機していた、ビーナス様に指輪のはいった箱を差し出していた。
状況に理解をこばんでいたノア、そして、会場の乙女たちは。
いっせいに、きゃー、とか、ギャー、とか、うわぁとか叫ぶと、手元ににぎりしめていた版券やら、ハンカチを投げ上げ、喝さいをあげた。
困ったのは、ノアだけではない。
熱烈なプロポーズを受けたビーナス様は、白目をむいて、こてんと倒れた。
『うむ、若い熱意や、よし』
夢魔は、ばさっと羽ばたくと、祝福した。
◇
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