35 ジンのほんとうの想い
雪の中に、純白の高位を示す衣が、月明りに浮かびあがっている。
静けさの中に、しんしんと雪が舞い降りて、黒髪に舞い降りて、触れたかと思うと音もなく溶ける。
淡いおもいは雪のように、かくも儚いものだったのか。
長衣を着たまま、ぼんやりと月と雪がまざる空をみあげる。
目に雪がはいって、涙の枯れた目に染みた。
「あの時、オレは…」
ジンはノアの唇にふれた、感触を冷えた指先で己の唇をたどり、思い出そうとするが、うまくはいかない。
ノアは生身の人間で、触れればあたたかく、やわらかい。
おもわず、もっと欲しいと感じた。
あの時、ビーナスにとめられていなかったら…。
ジンの見つめる先には、なつかしい思い出の地があった。
「ジン様、外は冷えます。さぁ、お戻りを」
からめとられた左腕をはらいたいのをぐっと我慢し、仮の愛をうそぶいた相手であるメーアを冷えたアイスブルーの瞳でとらえる。
なにも語らず、ジンは、彼女をそっとおしかえすと、宿の一室にもどっていった。
◇
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