33 なんだか大事に…
神様降臨の地、として、先のカフェは巡礼の要所として売り上げを伸ばし、ノアを隅々まで採寸し、ドレスを納品したブティックもまた、王都に数店舗を構えるまでに成長した。
どこにでもある街であったトオルは聖地巡礼の地に認定されてしまったようだ。
ノアの住んでいた自宅も封鎖され、厳重に警戒される対象となってしまった。
冬のツアーは申し込みがすでに済んでいた客も多かったことと、神様のおすみつきをもらったノアが手掛けていた事業であることも手伝って、ロウエンはにぎりつぶすことができず、粛々と準備は進められた。
当初の予想を大幅に修正することとなったのは言うまでもなく、神殿に身を拘束されたままのノアは業者のみなさんに心苦しくおもいつつも、打ち合わせを重ね、ふくれあがったツアー客をさばくため、以前、訪れたお宿の女将を起点に、ルノコ地方一帯の温泉街を巻き込んでの計画に書き換えていた。
一つの宿屋で完結するには訪れる人間が多すぎること、警備の問題もあって、お宿は各自手配をいただくこととし、参加者の面会時間は集団でのイベント開催といった形に格上げされた。
アイドルグループのライブと同じ感覚だ。
歌って踊るわけにはいかないので、大きな絵巻物や音楽隊、踊り子たちを手配し、夢魔様にお話をきいてもらう人は一定数の人に絞らざるをえなかった。
人間のお悩みというのは、まぁそんなにパターンがあるわけではない。
お金、健康、恋、家族…といったところで、どのような事が一番のお悩みポイントかを事前にご記入いただき、要望にそったグループを分けることにした。
これで、一斉にライブに参加して、代表者が夢魔様に問いかけをしても、しらけるということは少ないはずだ。
テンプレにはまらない方に対応するため、いままでに夢魔様がお答えになった事例集をノアは思い出しつつ、執筆した。
簡単な問答集のようなもので、乙女心は死ぬまで変わらないのを、まとめあげたときしみじみと感じたものだ。
ツアー決行の日、ルノコ地方へは雪がちらつく道程でありながら、数珠つなぎになって、様々な地方から、参加者が集結した。
参加者の熱気で、一部の雪がとけたとか、とけなかったとか。
◇
へっくし。
ノアはツアー客達が現地入りする前に、事前準備を神官たちと進めていた。
なぜなら、われらが神様もこの温泉地へ、いきたいとごねたからだ。
神様のお怒りにふれないため、彼らは、それはもうすばらしい動きを見せた。
神官たちのネットワークと上下関係はブラック企業も真っ青のキレで、ノアの指示はものの見事に瞬時に反映されていく。
舞台のイメージカラーは白で、華やかさを忘れずに、と注文をつければ、それを難なくこなしていく。
ノアはちょっと恐ろしくなってきた。この集団を前に、こっそりドロップアウトできる気がしない。
ちびっ子神様は貸し切り湯に、ご満悦である。
特別に女将から滞在許可をもらい、以前お世話になったミドラノ邸を事業の本拠地に据えている。もちろん、ノアのお助け部隊である神官たちも宿泊しており、ミーティングは食事の場、廊下、談話室と、さまざまなところで随時行っていた。
ノアがプライベートな時間を持てるのは、貸し切り風呂の中だけであった。
湯につかりながら、ここで起こった『ビーナス様は女事件』を思い出す。あの時のジン様はたちなおれないほどのショックを受けていたっけ。そのあと、夢魔様にとりなされて、ねているとおもったら…、急におもいだすとはずかしさに顔がほてる。
ロウエン様のメイドの方と間違われて、ジン様に押し倒されたのだったわ。
のぼせそうになったので、早々にお湯からあがると、体をふきあげ、衣に袖を通す。毎日、洗濯をしてとどけられる衣装は小袖に似て、ノアははじめ日本との一致におどろいたものだ。ここでは、下にゆったりとしたズボンをはくので、これで、神官たちとであっても恥ずかしくはない仕様である。
寝るまでの間、最終チェックを終わらせておかなくてはならず、ほおをぴしっとたたいて気合をいれた。
◇
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