32 商売とジン様と天秤にかけるのは危険です
「ノアぁ、あたし、もう帰りたぁい」
「もう少しの辛抱ですわ。ほら、ホットミルクですわよ」
ショウガとクローブをいれたホットミルクは良い香りの湯気を立ち上らせ、ノアはちびっこ神様の小さな手にカップを持たせた。
ノアも相当つかれているようで、目にクマができている。
あたしが、うっかりカフェで言っちゃったからぁ、あ~ん、わたしのばかばかばか。
自由の一切ない生活は、ちびっこ神様にとっても苦行であった。
「そうそう、今日、ジンらしき人影をみたの。あれは、きっとジンよぉ!」
急に、イキイキと語りだした神様を見返して、ノアはまばたきをする。
「ジン様が?どうされていましたか?」
ぴりっとした痛みが胸に走るが、彼の姿を見たという神様にすがりたくなってしまう。
「う~、とおいから、あんまりぃみえなかったけどぉ、しゅんとしてたかなぁ」
ずず、とミルクをお行儀わるくすすって、見た時の様子を思い浮かべる。
あんまり、元気という感じではなかったわねぇ。
「そ、そうですか。心配ですわね。冬のツアーにはお越しいただけると、ロウエン様からはお手紙にありましたけれど…」
「ん。でも、あの調子じゃ、女子たちはきゃあきゃあ言わないんじゃないかなぁ。お母様にしかられるわぁ」
遠い目をして、ちびっこ神様はブルりと震えた。
ジンはあのきらきらとした軽薄な立ち居振る舞いとやさしすぎる性格をお母様は気に入られてたから。反応のうすいジンなんて、つまらないものぉ。
「そ、それは、こまりますね。おきゃくさまに喜んでいただけないと、楽しみにしてこられる方々に夢をおとどけできませんわ!」
商売のこととなると、真剣に頭を悩ませるノア。
ジンのことが大切なくせに、ビジネスには容赦ないタイプであった。
◇
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