31 ジンにとっての神
にわかにあらわれた神官長巡礼ツアーのお土産物屋がたけのこのように増えたことに町中が驚く中、ジンは馬車に乗せられ、教会に向かっていた。
ロウエンからは、「神様が降臨された。〈お迎えの儀〉に行ってこい」とだけ、告げられ、いやいや馬車に乗せられ連れてこられたのだ。
ノアのいない日々は味気なく、ビーナスや夢魔との会話も上滑りして、楽しめない。
二人と二匹でいたころは、ありふれた会話があんなに楽しかったのに。
夕焼けで空を眺めていたノアは純粋にうつくしく、あれほどに神聖な存在はないとジンは確信していた。
彼女こそが、この国の―――神にふさわしい。
◇
神様こと、ちびっこはもう、飽き飽きしていた。
延々とつづく、坊主たちのあいさつにつきあうのは、苦行でしかない。
お母様におこられているほうが、マシとか、どういうことよぉ。
はやくも、音をあげ、もうかえりたいと合図をおくるが、神官長は微動だにせず、背後を固めている。
あくびをかみ殺していると、「神官たちより、ご挨拶申し上げます」と、もう何度目かわからないグループが入室してくる。その中に見知った顔があることを見て、目をみひらく。
あれってジンじゃないの?
だいたいが高齢、中年の中に、青年が混ざっていること自体めずらしいので、目を惹く。
それに、ゆたかな黒髪のうねるさまは闇夜の銀河のようで、たれ目がちな目元はたしかに彼であった。
声をかけようかと、腰をうかすが、ぐい、と押し戻された、ぶぅと頬をふくらませる。
ここでは、神官長の言う通りにしないといけないのだ。
ほんとっあたまにくるわぁ。どっちが上だかわかってないんだからぁ。
心の中で悪態をつきつつ、つんと澄まして、すわっていると、もう、謁見は終わりで、次々とこの後も夕暮れまで、団体が入室しては、退室を繰り返していった。
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