29 家にかえりたい…
以前、すみずみまで採寸されたおかげで、体の線がばっちりわかるように縫製された真っ白なスーツを着せられたノアが教会の一室にいた。
「あの、わたくし、こちらで、神様にお仕えすればよろしいのでしょうか」
とまどいもあらわに、ノアは問いを発する。
カフェで倒れてから、ノアは神様と自宅に帰ったものの、その後は、怒涛の展開であった。
キッチンでくつろいでいたところ、教会から遣いのものがきて、あっさりと、自宅から神様ともども教会に閉じ込められたのだった。
教会の一室で「神様のお戻りをまて」と言われ、思わず、
「あのぅ、いつ家にかえれるんでしょうか?ドレスとか、スーツのひと揃えを届けるように依頼していまして…」と困ったことに、仕立て屋から取り立てがくることを伝え、家に帰りたいというの遠回しに言ったつもりだ。
なのに、それは、さくっと切り捨てられ、「お金を貸与し、そこから支出せよ」と圧をかけられ、帰れなくなったのだった。
権力者は嫌いだ…。
このおそろしくもパワハラな発言をした神官はトールの街の神官長補佐であることを示す、袈裟のようなものをかけていた。
いかつい顔に似つかず、柔らかな物腰で、有無をいわさず、椅子を進められた。
「いかにも、神様はそうおっしゃられました。ノア様は側仕えにして遣わすとの仰せです」
ちびっこ神様は絶対、逃がさない。その意気が感じられる。そして、その神様もノアをぜったい家に帰さないという事らしい。
ああ、はやく、家にかえりたい。
ノアはこの息つまるやりとりを何度も繰り返したことを思い出す。
事の顛末は、こうである。
ノアがカフェでぶっ倒れた時、たまたま非番の神職がいた。
そして、明るみになる神の降臨。
「丁重に扱うように」と。ちびっこが偉そうに指示したのが功を奏したのか、あれよあれよという間に、神様の側仕えという地位をノアは確立してしまったのだった。
おかげで、ドレスの支払いに窮することはなかったが、堅苦しい神職の場に駆り出され、神様のご機嫌取りという大切なお役目を賜った次第だ。
わたくしってついてない…かも。
◇
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