28 神があらわれた!ビジネスチャンス到来か。
千人を超す神官たちがびっしりと詰め込まれた教会の大講堂には、高座が据えられ薄絹のとばりが下ろされている。香が焚かれ、全員で唱和する読経とベルの音がひびき、荘厳であった。
〈神のお迎えの儀〉を執り行うこととなったのだ―――。
自称神様はちんまりと、最もえらい人がすわる席にすわっていた。神様は、銀糸の縫い取りに水晶の玉が縫い取られた、下までつく長いたもとを椅子のまわりに垂らし座す。
裾のやたら長い衣装のおかげか、遠目には幼児であることはわからない。
尊大な物言いも、この席から発せられると、その通りとおもえるから不思議だ。
木造建築では類を見ない大きさの講堂であるけれど、ここに、集結した神官たちは講堂にはいきれないものも多く、ノアのいる街は急な神官ラッシュに沸いていた。
街中の宿は神官で埋め尽くされ、どの通りにも神官がいる。
恐ろしいまでの伝達速度で、コーネル王国全土から、神官たちのなかでも高位の者達だけが、集結した様は隣街の王都の住人も真っ青なできことであった。
なにせ、街という街から、神官長が消えたのだから。
巡礼の旅といった風情で、ぞくぞくとコーネル王国の東の街トオルは今、もっとも、神官たちが目指したい神聖な地であった。
週刊新聞の見出しに「あらたなビジネスチャンス到来!トオルの街に神来る!」という文言が大々的におどり、宿の人員急募!やら、かんたんな清掃業務、運転手求む!などの、求人広告が激増し、王都にまで、その経済効果は波及した。
げにおそろしき、「神」効果。
教会の寄進は爆増し、ノアにわたされた金銭はごく一部なのであった。
これには、ノアの立ち上げた「フクロウの館」ブームはトオルの街のみならず、近隣の都市まで、知れ渡っていた。
それほどまでに癒しを求めていた女性たちが多かったのだ。
いままで、お得意客であった教会にきていた女性たちがごっそり「フクロウの館」、もしくはその後にあらわれた摸倣店が、教会の信者を奪っていった。
窮地にたたされた教会の起死回生の一打として、〈「神」様大歓迎キャンペーン〉であった。そんな、大人の事情に巻き込まれた形で、ノアと神は教会に、囚われ?の身になったのであった。
◇
「運がついてきた!」「ビジネスチャンス到来!」と思ってくれた方は、
☆☆☆☆☆ → ★★★★★にしてくださいね。
皆様のブックマーク、評価は作者のモチベの元ですにゃん☆
勇気を出して(^^)/~ ぽっちとよろしくお願いいたします!




