24 なんですって!!あなたが××なんですかっ
〈冬のツアーはジン達がどうしてもやりたいといっていた。チャンスをやろう。
おまえが手配しておけ〉
それから、ロウエンの指示だけがノアの住む自宅兼事務所に伝えられた。
一枚の紙には、ロウエンの花押がおされている。
「うれしいご案内ではありますね…、では、神様、こちらはお受けして、冬のツアーでジン様を取り戻す、ということでよろしいですか」
ノアはこの幼女が神だと語ったときの衝撃を、いまでもおもいだすとぶっ倒れそうになる。
◇
「あぁ、そういえばあんた名前は?」
ブランドショップからの帰り道、立ち寄ったカフェで幼女がいまさらな質問をしてきた。
知らなかったのですね…。というか、さきほど送り先にわたくしの名前をかいたのだけれど。
「申し遅れましたわ。わたくし、ノアと申しますわ」
紅茶は良い香りの湯気を立てているが、心は寒々、財布は手持ちの分を使い果たしそうだ。
「あら、ノア。野良みたいな名前ねぇ」
「ときどき間違われますわ」
「それは、まえの世界での名前なのぉ?」
ぎょっとして、見返す。そういえば、得体の知らないちびっ子なのだ。知らない間に部屋にあらわれていたし、きらりと光る新緑の目はちょっと人間離れしていて、ときおり光るのだ。
「そ、そんなところですわ。わたくし別の街からきたのですけれど、長い名前だとよびづらいでしょう?」
実は、もっと、まともな名前で暮らしていた。
―――鈴木 乃蒼、という名前で。
ビル街には、ビジネスパーソンがうごめいている都会。なにもしらずに飛び込んだその場所は、ノアにはちっとも優しくなかったけれど。
「ふ~ん。で?―――わたしはここの世界の神様よ」
飲みかけの紅茶をふきだしそうになって、まじまじと幼女の顔、体をみる。
ただの子どもではないとおもったけれど、神様?
「信じてないわねぇ。ジンを送り込んだのはあたし、っていったでしょう?」
そうだった。ジン様は神様からつかわされてきた――――。
目の前の自称、神様は「ジンを取り戻しにやってきた」といっていた…。
ごくりと、つばをのみこみ、しばし、黙考する。
たしかに、辻褄はあう。
ということは…、わたしがこの世界にほうりこまれたのは、この神様の仕業なのかしら?
「信じたほうがよろしいのですわよね?」
かすれた声はよわよわしく、こぼれおちた。うつむいてノアは耐えた。
「うそよ!
うそ!
どうして、わたしをこの世界へ取り込んだの!
返して!もとの世界へ返ししてよ!」
ノアの心の深い底にしまいこんでいた、本音があふれ出しそうになる。
「ジン様を、
夢魔様を、
ビーナス様を
わたしから取り上げられていくなんて、なにもかもなくすのはもうイヤ!」
うずまく、こころの叫びを鎮めるため、ぎゅっと手をにぎりこみ、血が出るほど握りしめた。
だめ、だめ、こんなところで叫んだって、だれもわたくしをたすけてくれはしないのよ。
ああ、神様。どうして、わたくしにはなにも、残らないのですか…。
ノアはゆっくりとかしいでいき、椅子から転げ落ちた。
◇
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