23 ショッピングは危険がいっぱい?
「さぁ、あたしの着替えを買いにいくわよ!それに、あんたのもね!なぁんて、冴えないファッションなの?あんたはゴミダメから服をもってきたのかしらぁ。センスがないわ!しかもぼろいわ!」
ふんぞりかえって、ちびっこに説教をされてしまうノアであった。
ご指摘がいたいわっ。
ノアは昔、教会で捨てられていたフードを拝借している。まさにその通りであった。
今の服はもちろん、ゴミだめでひろってきたものではないが、古着屋で安くなっていた服をサイズ調整して着ている。どこをちょうせいしているかは秘密だ。
「まぁったく、そんなんだから、ロウエンとかいう、いけ好かないやつに負けるのよ!もっとしゃんとしなさいよぉ!あたしが、その場にいたら、たたきのめして、けちょんけちょんにして、鍋にほおりこんでやるんだからぁ」
すごいことを公衆の場でおしゃべりする、見た目だけは金髪の幼女である。
目を惹かないわけもなく、おもいっきり叱られているノアを憐れむ目がよりこころにいたい。
大通りを歩いていき、ノアが幼女に指し示した、
「も、もうしわけございません。あ、こちらのショップはいかがでしょうか?最新のプチプラで大人気なお店ですのよ」
ぱっと、営業モードで、若い女性客でにぎわう店内を示す。
「ふぅん?で、あんた、ここで買ったことあるのぉ?」
「…」
「さ、次行きましょ」
あっさり、撃沈した。
大通りを進み、次こそはと手をふりかざす。
「こちらは、今、王都で流行中のデザイナーズのブランドを並べているお店ですわ」
営業スマイルで、得意げに話す。もちろん、入ったことも買ったこともない。店先のトルソーは華やかなビジュをちりばめたドレスを着ていて、高級感が半端ない。
「ふっ。あなた、なにも知らないのねぇ。これは、デザイナーの孫弟子のブランドでしょ。今、流行ってないわ」
がーん、とあたまを殴られたような衝撃をうけ、ふらりと壁にもたれかかる。
それを、煙たそうにドアマンが払いのけ、すごすごと退散した。
という、不毛なご案内合戦を繰り返し、最後に行きついたのは、誰もが知る高級ブランド店である。ハイセンスと機能美が一体となったスーツは女性客にも人気なのだ。
ジン様に会いに来るマダム達の御用達のお店であることからも窺い知れる。
もちろん、この街ではもっとも高級な部類の衣料用品店である。
胃、胃がいたい。このブランドをひと揃え買うとなると、ノアのため込んでいた貯蓄など、ふっとんでしまうだろう。
ああ、また、野宿生活…。
次々と試着しては、これとこれは生地が合わないからダメ、わたしの目の色わかってる?などと、店員をこきおろしつつ、ちびっこ旋風がまきおこる。
隅っこで小さくなっていると、あんたはこれ、と渡された。
高級スーツの一式である。おそろしくて、手を出しかねていると、ちびっこの相手に疲れていた店長が、目で指示して、従業員を動かし、ノアをさらうように着替え室へ送り込んだ。
ああ、お金…。
詰め物をしていた胸もと、腰回りがバレ、赤面するノア。
やせぽっちなので、まわりに気づかれない程度にもっていたのだが、すべてさらけ出してしまった今では、ノーガードである。
採寸されおわるころには、力尽きて、椅子にへたり込んだ。
高級店っておそろしい。びっしりと数字が書き込まれた人体の図面ができあがっており、採寸係は満足げに、ノートを手に出ていった。
紅茶を別室で飲んでいた取り立て主こと金髪幼女は、「やっとおわったのね」と若干ひまをもてあましていた。
この街のハイセンスなスイーツ店のクッキーやマカロン、チョコを一人で味わっていたようだ。
「はい。お待たせしてもうしわけありませんわ」しおしおと、しなびそうなノア。
ちびっこのテーブルに、仕上がった品を送る自宅の住所と名前をを記帳する一式が机におかれている。ノアはうながされるまま、青白い顔で、ふるえる文字を書き込んだ。
いくらで、請求がくるのかしら…、おそろしくて、何も考えたくない。
みんな、はやく、帰ってきて!
ノアは心から、願った―――。
夕焼けのあの日、これをお願いしておけばよかったな…。
神様はひとつだけ、お願いをきいてくれるといってたから、もっと、たくさんいろんなお願いだけでもしておけばよかったかも…。
◇
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