22 闖入者は尊大な幼女?
自室で、ジン様、夢魔様、ビーナス様へそれぞれ宛に手紙をしたためた。今までのごめんなさいと感謝、それから、これからお元気で、といった内容を。こっそり貯蓄していた預金は彼らに引き出せるよう分割して、権利を譲渡することにした。
それを鍵のつけた小引き出しにしまって、寝ようと後ろを振り向いた。
「ねぇ、あんた。ほんと辛気臭いわねぇ!ところで、ジンはどこへやったの?」
ベッドにちょこんと腰掛けた幼い少女がいた。
えーっと、おかしいわね。だれも入ってこないように鍵をかけてあったし、なんでこんな夜更けにこどもが?
「あのぉ、どちらさまでしょうか?」
「だからぁ、ジンはどこへやったっていったの!」
びしっと指をつきつけてきた緑の目がぎらぎらと輝いて、威圧されてしまう。
「あ、あーえっと、その、ロウエン様という方に引き取られていったようですわ」
「あ?引き取られたって、どういうことよ!あれは、あたしの!あたしの、もちものなの!それも、おかあさまにおかりしていたから、あたしのでもないのだけどぉ、だからって、あんたのものでも、そのロウエンとかいう男のものでもないのよぉ!」
ぜぇはぁと息をあらげつつ、仁王立ちして、腰に手を当て、お怒りモードである。
…でも、身長がノアのおなかのあたりまでしかないため、かわいかった。
「も、もうしわけありませんわ。ですけれど、ロウエン様はこの国のお力のあるお方ですし、わたくしでは、とても…、戻ってこられても一時的なものとなるかと」
わたくしも混乱しているのだ。もう、あえない気すらしているが、一縷の望みをかけて、自宅にこもっているのだから。
「ふんっ!つかえないわね~ぇ。じゃぁ、しばらくまたせてもらうわ。あんた、何ぼさっとしてるのよ!あたしに夜食とお風呂の用意は?」
ぺっぺっと手を振ると、ノアを部屋から追い出し、どかっとベッドに居座る。
「どーせ、小さい家なんだからぁ、まともに寝られる部屋はここしないんでしょ。あんたはその辺で寝なさいなぁ。うっふっふふふ」
ノアは突然あらわれたジンの所有者という幼女の取り立て屋?にあっているようだ。
大慌てで、家にあったローストハムと野菜サラダをプレートに盛り、スープを温めなおして、パンと紅茶を添えて、ノアの元自室に運んで、給仕する。
「あら、あんた、給仕はできるのねぇ」
「はい。ジン様におしえていただきましたの」
内心は冷汗だらだらである。ジンに給仕させていた、とは口がさけても言えない。
「次は、お風呂にはいるからぁ。あ、ネグリジェはあんたのでゆるして、あ・げ・るぅ」とふんぞり返って言われた。
大きすぎないかしら?とは、おそろしくて言えない。
うん、大は小をかねるっていうし。
食べ終わった食器を引き、テーブルをきれいにすると、お辞儀をして、部屋を後にした。
あわただしく、階段を上り下りし、風呂を整え、案内をする。
「あの?お背中ながしましょうか?」
高貴な方は一人ではいることなないそうだし…。
「ふっん!おきづかいはごむようですわぁ!あんたなんかに触ってほしくないのぉ!」
じぶんで、できるんだからぁ、とかなんとか聞こえたが、知らないふりをして、タオルの場所と着替えの場所を示して、そっと扉を閉めた。
やれやれ、疲れる一日だ。
用事はないことをいいつかって、ようやくキッチンで一息をつく。
ぐ~っ
あ、ごはん食べるの忘れてた。
ショックのあまり、食事を忘れ、ちびっこの取り立て屋に振り回され、何も食べていないことにようやく気付いた。
スープをあたためパンを浸しながら、飲み込む。
味がしない。
もっと、いつもはおいしく感じるのに…。
さて、どこで寝ようかしら―――?
ジン様の部屋はもし戻ってきたらと思うと、使う気にはなれないし、そもそも、男の方の部屋にはいるのも…、ということで、キッチンの長椅子にクッションをあつめて敷き、テーブルクロスを布団代わりに、体に乗せて、寝場所を確保した。
枕に選んだのはビーナス様のいつも眠っているクッションだ。
しかし、激重の黒猫様の体重で、かなりへたっていた。もとはふんわりとしっかりとした弾力をもっていたはずの丸かったクッションは見事にへこんでいる。
ああ、買い替えてあげていればよかったですわぁ…。
後悔先に立たず。
◇
「運がついてきた!」「いいね!」と思ってくれた方は、
☆☆☆☆☆ → ★★★★★にしてくださいね。
皆様のブックマーク、評価は作者のモチベの元ですにゃん☆
勇気を出して(^^)/~ ぽっちとよろしくお願いいたします!




