20 ヘッドハンティング
「やーっと見つけましたの!ジン様ぁ。あたくしのことを放っておいて、こんな街にいらしたのですね!」
がしりと、街を歩いて、冬のツアー客をあつめるべく、街頭営業をこなしていた、二人と二匹の元に、華やかな衣装が若干悪目立ちする少女が突撃してきた。
そして、神官服を着ていたジンにまとわりついた。
周りの住人たちは目が点になり、ひそひそと疑問を交わし合う。
こんな田舎町に貴族然とした、長身の男と女、少女が現れたのだ。
それは、まぁ、ものすごく目立っていた。
「もうっ、さがしましたのよ!あたくしとジン様は褥を共にした仲ではありませんかぁ。もう、離れませんわ!」
しならせた腰をぴったりとジンにおしつけ、上目遣いにみる目は獲物を捕らえた猛獣のようで、周囲はドン引きである。
ざわざわするギャラリーに、
「ジン、このようなところで、働いていたのか…、僕がもっとよい境遇を提供しよう。なぁ、ワラヤもそう思うだろう?」
小麦色の肌に赤茶の髪を伸ばした美丈夫、その隣に当然のように立って、腕をからませていた、釣り目の美女は銀髪をさらりとかきあげると、紅い唇をにんまりと孤をえがかせた。
「もちろんですわ!そこにいる貧相な小娘なんかに私のロウエン様が負けるとでも?コーネル王国の理事の座を代々お持ちなのですわよ!」
おーほっほっほっほッ
キレのある高笑いで周囲を制圧した。
「ああ、僕のいとしの黒猫様はこちらにいらしたのですね。なげかわしい。このような街であるかれるなど。さぁ、僕と一緒にいらしてください」ビーナスの前に片膝をつく、ロウエン。
びしりと固まったビーナスは招き猫の姿勢で、ぎぎぎとノアのほうをむく。
ノアは首をふって、どういうことかまったく?と合図を返す。
銀髪美女はなめらかに移動すると、真っ白なふくろうが止まる杖の前に立った。
「夢魔様のお噂はかねがね。ぜひ、ご一緒に、きてくださいまし。―――ああ、そこの小娘は関係ございませんことよ」ぴしりと扇でノアを指す。
立ち尽くすノア。
興味津々でこのカオスな状況を見守る街の人々。
小さな街の露天ひしめく広場に、ジン、黒猫、夢魔を引き抜くため、エージェントもとい、雇い主候補がスカウトに来たのだ。
ジンをつかまえ、ピンクのゆるぎないまなざしで彼を縫い留めたメイド。
ロウエンは黒猫を捧げ持ち、ワラヤは夢魔を抱きかかえると、あっけにとられてみている街の人間とノアをおきざりに、傲然と道を去っていった。
しばらく、呆然自失で立ちすくんでいたノアは、急に現れた、昔自分を黒猫とおもに拾ってくれた男とその取り巻き達の登場に思考は停止中だ。
「ちょっとちょっと姉ちゃん。あれ?さっきの人たちなに?」勇気ある少年がノアに声をかける。
口をパクパクして、目を泳がせていたノアは、息を吸い込むと、はっと我にかえり、声をかけてくれた少年に「大丈夫ですわ」と一声かすれた言葉を残して、ふらふらと街を歩いて聴衆のまえから帰っていった。
◇
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