17 ノアのツアー大作戦
ジンはなぜか、ブルりと震えて、腕をさすった。数日ぶりにもどってきた住み慣れた街は賑やかで、温泉地に比べると暖かいのに、なぜか、寒気がしたのだ。
風邪でもひいたのだろうか?
ジンは温泉地ツアー開催の宣伝のため、せっせと土産話を振りまいている最中だ。
もっとも、ノアとの大事な思い出は彼の心の奥にしまっているが…。
「もうっ、ジン様ったら、どなたのことをお考えですの?わたくしたちとお話している最中に、いいひとを思い浮かべるのは反則ですわ」
「ああん、んでもぅ、ジン様にそのように想われてみたいですわぁ」
お客として彼を囲んでいる五人は、れっきとした貴族のお嬢様方である。もちろん婚約者もいる。けれど、結婚する相手に求められないものを神の御遣いであるジンに見ているのだ。
「仮初でもいいから、この方とお付き合いしたい」
といった乙女心をガッチリとつかんでいるのは、元ホストの手腕であろうか。
「そんなにすねないで、レディ達にはオレから特別にチケット出すから」
きゃぁーと黄色い声をあげて盛り上がる女子たち。
無論、温泉街への誘導である。
わかっていても、好ましい男からお誘いされるのは、うれしいものなのだ。
「うふふ、うまくいっているようですわね。この調子ですと、『冬の雪化粧を夢魔様&神の御使いと楽しむ会』は、盛況になりそうですわ。馬車とお宿の手配を進めなくては」
陰からこっそり窺っているノアは、ふくふくと笑い、夢魔と目で確認しあう。
夢を提供できるなんて、すばらしい社会貢献だわ。
ノアは充実感を覚えていた。
―――教会で神官をしているより、よっぽど神の恩寵を与えられているジンなのであった。
巷ではあらたなブームをまきおこしているとは露知らず…。
◇
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