16 ペットロスかもしれない
ペットロスに見舞われていた男が一人。
「ロウエン様ったら、そんなに黒猫様のこと、想われていたのですね。私じぇらしいを感じますわ」
「あのつややかな毛並み、つぶらな瞳、そして、三角の耳。しなやかな尻尾。ああ、すべてが愛おしい」
机につっぷした先には生乾きの草稿がある。
彼は、急にさびしさをまぎらわせるため、ポエムを嗜むことにしたようだ。
「どうして、僕の元から去ってしまったのか」
ワラヤはあきれつつ、ほっぺについたインクを見て、ほっとけないわねぇとおもった。
ポエムの出来は、いまひとつだが、想いは本当のようだ。
なにか、この青年に癒しとなるようなイベントを催してあげたい。
ワラヤはこっそり、励ませるネタをさがすことを決意した。
◇
「わ~ん、ごめんなさぁい。だって、おもしろそうっだんだものぉ」
頭をかばって、ひんひん言っているのはちびっこ神様である。
レースのついた扇子を振り上げているのは、金髪の美女である。緑の水玉のようにきらめく瞳には憤りを、吊り上がり気味の右の眦の近くには黒子があって艶めかしい。滑らかなデコルテには見事なふくらみが2つあり、くびれた腰は細い。ヒップから下にゆったりとしたシルエットをもつドレスからちらりとのぞくのは、高いヒールだ。
わなわなと震える唇は赤くつややかで、おもわず口づけしたくなる魅力にあふれている。
「あなたのせいで、わらわのうつくしい男コレクションが減ってしまったではないか!ゆるせぬ。はよう、とりもどしてきや!」
「ひゃいい!わかりましたぁ。すぐにとりもどしてまいりますぅ!」
なんともしまりのない宣言であったが、ちびっこ神様は怒れる母の悋気にがたがた震えつつ、脱兎のごとく逃げ出し、もとい、ジンを取り戻すべく、人間界へ赴くのであった。
◇
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