14 お湯につかると×××になるぅ
「うぎゃあああ」
「な、なにごとですの!」
ビーナス様が入浴したのは見たが、戻ってきて、ノアはあせる。ジンの姿が貸し切り棟の小部屋にないのを見て取り、次に、湯屋の方向から彼の声が聞こえてきたのを確認し、ノアは思い切って、脱衣所の扉を開ける。
「どうしましたか?なにか、ご体調に問題でも?」
脱衣所の向こうには衝立が置いてあり、湯気がその向こうに見える。
「ど、どっどどうして、貴様が、お、おんんな、なのだ~」
おんな?ノアは首を傾げた。だって、ここは貸し切り風呂だ。だれか、まちがえて入ってきたのだろうか?
「は、は~ん。おまえ、知らなかったのか。オレ様はそんじょそこらの女より、ないすばでーなのさ!」
「う、うそだ。お、オレはこんな破廉恥な!」
ど、どうしましょう!夢魔様を見ますと、
『うむ、そうなるな』
あ、そういうことですのね…。
わたくしは理解しました。そうですわね、ビーナス様、ですものね。きっとすばらしい曲線美と絶世の美女でしょうとも。
でも、なぜ今、女に?
『ビーナスはお湯に入ると、殻がとけて、戻るのだ』
「ええと、そうすると、寒くなると、殻にもどるのでしょうか?」
『そうだな』
なるほど、そういうことでしたか。
「うわぁ、こっちへ来るな!目がつぶれる」
「よいではないか、おぬしは存分にさわってよいぞ」
何やら、いかがわしい会話であるが、ジンは湯の中を逃げ回る音がこちらまで響き、もうもうと湯気があがっている。
「ジン様~、ビーナス様に涼しくなってもらえば、元のお姿に戻るそうですわ~」
「む、無理をいうな!この怪力女、はなせ!」
どうやら、つかまってしまったようだ。
ジンは死に物狂いで、背中にはりついた絶世の美女ともども、湯から這い出すと、四つん這いで、脱衣所の方までじりじりと進む。
その後、「うわっ、つめてぇ」「はやく、もとにもどれ!」と、争う声がしていた。
ノアと夢魔はさっと、脱衣所から身をひき、何事もなかったかのように、小部屋にもどると、うっすらと汗をかいた額をぬぐう。
『なかなかにホラーであったな』
「ええ、なかなかこわかったですわね。はりついたビーナス様の御髪とジン様の御髪がみずもしたたるなんとやらで、お顔はみえませんでしたけれど、目だけ光っていて、結構ぶきみでしたわね」
ぶるりと震えて肩を抱く。
はやく温泉で、心からあたたまりたいと願うノアであった。
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