10 ジン神官になる
「ふふっふ~ん。こっちのお洋服もすてきだし~、あ~こちらもすてきですわぁ」
ノアは少しだけ伸びた髪をハーフアップにし、ジンを連れてショッピングを楽しんでいた。
お金に余裕はないので、見ているだけである。それでも、素敵なものを見るのは心浮き立つものである。
「オレにもう少し甲斐性があれば…、スミマセン。客引きのはずが、囲まれてしまって、上手く誘導できないんです」
しょんぼりしながらついてくるジンは立っているだけで、匂いたつようなキラキラしさである。
「そうね~。ジン様は誘因力がすごいんですけれど、女性のみなさまにお優しいから…、夢魔様の所までお連れする前に、連れ去られているのですよね…」
「ははは。客引きは向いてないですね。いっそ、オレに会いにくるには、夢魔様を通してもってからという順序ではどうでしょう?」
「う~ん。それはなんか、いかがわしい目的で来られた方を吸い寄せそうですけれど、夢魔様によこしまな思いも浄化されてしまうから、案外いいかもしれませんわね!」
ぽんっと手をたたくと、ノアはくるんとジンをみあげた。
「では、ジン様をもう少し飾り立ててもよろしいでしょうか?わたくし、やってみたかったのですわ!」
がしっと腕をつかむとジンを引きずる様にお店を突っ切って行く。
「わわ、ちょっとノア様。オレをどうするつもりですかー!」
乙女の暴走は止められない。離れた所で、毛づくろいにいそしむ二匹は、生暖かい目でみおくった。
◇
神々しいまでの出で立ちである。
ジンは神の御遣い(下僕)だったので、教会でそれを証明し、あっさりと神官に任命された。そして、支給されたのが、このずるずると引きずるまでの長衣である。
ゆったりとした衣はジンの胸板をちらりとのぞかせる前合わせで、腰帯は教会でも、ジンの階級がいまひひとつよくわからなかったため、下位の位階を示す、黒帯に銀の刺しゅうが細くはいっただけのものである。真っ白な衣に真っ黒な黒帯を前に垂らし、ゆったりと歩けば、街中の娘がぽっと頬を染め、ご婦人方はふらりとよろめいた。
「素材がよいと映えますわね~。これで、我らが『夢魔様』もさらに、お客様を呼び込めるというものですわ!」
「あの、これで本当によろしかったのでしょうか。教会の方々に洗いざらい神様(上司)のことをお話したら、ドン引きされていたのですが…」
「あ、ま、まあね。神様がちびっこのお姿で、容赦ないお方であるというのは、インパクト強すぎたみたいですものね…」
思わず遠い目をする二人である。神の御使いであるというのは、嘘ではない。『ノアをひいひい言わせて惑わせる役』を仰せつかっているのは本当である。
ただ、事実はもっと軽薄なものである…。
長すぎる衣は裾をたくし上げて、片手で持ちながら、ジンはやるせないため息をはいた。
◇
お読みいただきどうもありがとうございます!
「いいね!」「好き!」と思ってくれた方は、
☆☆☆☆☆ → ★★★★★
皆様のブックマーク、評価は作者のモチベの元☆
勇気を出して(^^)/~ ぽっちとよろしくお願いいたします!
本日、18時頃 続きアップ予定ですm(__)m




